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アンドレ・カプレ 歌曲「朝の鐘」

アンドレ・カプレ (1878-1925)
11 /06 2011
「朝の鐘」 Cloche d'aube

原詩 ポール・フォレ
作曲 アンドレ・カプレ(1919年、41歳)

Ce petit air de cloche, errant dans le matin,
鐘のかすかな音は、朝の大気を漂い、
a rajeuni mon coeur à la pointe du jour.
黎明のわが心を蘇えらせた。

Ce petit air de cloche, au coeur frais du matin,
この微かな鐘の音は、朝の爽やかな心に
léger, proche et lointain, a changé mon destin.
軽やかに、近く遠く響き、そしてわが運命を変えた。

Quoi! vais-je après cette heure survivre à mon bonheur,
何ということか! この時の後に、私は幸せに生き永らえるのか?
ô petit air de cloche qui rajeunis mon coeur?
おお、わが心を蘇らせる、かすかな鐘の音よ。

Si lointain, monotone et perdu, si perdu, petit air,
はるか彼方の、モノトーンに消えた、消えでしまった、かすかな音色
petit air au coeur frais de la nue,
天空の爽やかな心に響く、かすかな音色、

tu t'en vas, reviens, sonnes: errant comme l'amour,
お前は去り、戻り、響き、さまよう、愛のように
tu trembles sur mon coeur à la pointe du jour.
お前は黎明の私の心にうち震える。

Quoi! la vie pourrait être monotone et champêtre
ああ!わが生がモノトーンで田園風で、
et douce et comme est, proche, ce petit air de cloche?
甘美になることがあろうか、このかすかな鐘の音色のように?
*pourrait→pouvoir条件法現在(三・単)

Douce et simple et lointaine aussi, comme est lointain
甘美で、単純で、また遠く離れた、この彼方の音色のようでいられようか、
ce petit air qui tremble au coeur frais du matin?
朝の爽やかな心に震える、かすかな音色のように?



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「ポール・フォレのフランスのバラードによる5つの歌曲」(1919年)の第一曲。喧騒の都会の朝、遠くから響く鐘の音色に聴き入る詩人は、その音色のように静謐でシンプルな生に思いを馳せる。反響し回帰する鐘の音のように、前半の語彙は切れ切れに後半で繰り返される。声のオブリガート付きのピアノ曲にすら聴こえる、この素晴らしいピアノの書法は、彼方の鐘の音色が時には切迫し、時には回顧のように主人公の心に迫ってくるさまの描写のようだ。

カプレはドビュッシーと交流が深く早くから第一線の音楽家として活躍したが、第一次世界大戦に従軍してドイツ軍の毒ガス攻撃で肺を痛め、戦後は隠棲して声楽曲と室内楽の作曲に専念したという。この声楽曲の孤高というべき水準に、最近ようやく気が付いた。

アンドレ・カプレ 歌曲「森のみたもの」

アンドレ・カプレ (1878-1925)
11 /03 2011
フォーレとドビュッシーがヴェルレーヌの詩で開拓した、自然と人間の心理との繊やかな混淆を描く歌曲。それを次の世代で引き継いだ作曲家は。アルベール・ルーセルとアンドレ・カプレではないだろうか。いくつかの作品を聴いてみて、二人の優れた作品はそうした領域に達していると思う。

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アンドレ・カプレ 歌曲「森のみたもの」Forêt

原詩 レミ・ド・グールモン(1858-1915)
作曲 アンドレ・カプレ

Ô Forêt, toi qui vis passer bien des amants
おお森よ、お前は恋人たちが通り過ぎるのを見た、
Le long de tes sentiers, sous tes profonds feuillages,
お前の小径を辿り、お前の深い木陰を行くのを。
Confidente des jeux, des cris, et des serments,
戯言の誓いや、嘆きや、愛の約束を、
Témoin à qui les âmes avouaient leurs orages.
恋人たちの激情の告白を目にした。
*avouaient→avouer直説法半過去(三・複)

Ô Forêt, souviens-toi de ceux qui sont venus
おお森よ、思い出しておくれ、かつて来た者を
Un jour d'été fouler tes mousses et tes herbes,
ある夏の日に、お前の苔と草とを踏みしめた者を、
Car ils ont trouvé là des baisers ingénus
彼らはそこに見出したのだ、心からの接吻と、
Couleur de feuilles, couleur d'écores, couleur de rêves.
葉々の色、木々の色、そして夢の色とを。

Ô Forêt, tu fus bonne, en laissant le désir
おお森よ、お前は優しかった、欲望を受け入れ
Fleurir, ardente fleur, au sein de ta verdure.
そして咲かせた、情熱の花をお前の緑の草木に。
L'ombre devint plus fraîche: un frisson de plaisir
影はさらに肌寒くなった、快楽の戦慄が
Enchanta les deux coeurs et toute la nature.
魅惑したのだ、ふたつの心と自然のすべてを。
*fus→être単純過去, devint→devenir

Ô Forêt, souviens-toi de ceux qui sont venus
おお森よ、思い出しておくれ、かつて来た者を
Un jour d'été fouler tes herbes solitaires
ある夏の日に、お前の苔と草とを踏みしめた者を、
Et contempler, distraits, tes arbres ingénus
そして見つめていた者を、夢うつつで、お前の無垢の木々と
Et le pâle océan de tes vertes fougères.
緑の羊歯のつくる淡い色の大海原を。




ヴェルレーヌ詩の後半には、多くの場合詩の円満な解決をぶちこわす一語が置かれているが、このグールモンの詩は前半二行をルフランし、効果的に語彙(ingénus)を繰り返してスタティックな終末をつくる。しかし、視覚のイメージは逆に朦朧とした色彩に消えていく。かつて夏に足取りも軽く森にやってきた恋人たちの記憶-第二節の踊るようなリズム-は、季節とともに移り変わる森の色彩の中に消える。さまざまな森の物音と情景を簡潔に描くピアノは、絶え間なく声とふたつの歌を歌っているように聴こえる、聴こえないはずの自然の歌までも!


アンドレ・カプレ 歌曲「おいで、目に見えぬフルートよ」

アンドレ・カプレ (1878-1925)
10 /10 2010


フルート伴奏の歌曲ということで、アンドレ・カプレのこの曲も。
これは風の音を「見えないフルート」に見立てて、それが羊飼いや鳥、恋人たちの歌を伴奏するという、短いながら印象的に美しい情景。フルートが風の音色、ピアノが水面の音や鳥の歌を描いて、最後に「恋人たちの歌」を伴奏するピアノの分散和音が綺麗だ!

音とびする箇所がありますが、珍しい音源なので。フルート王国日本で、これらの曲を誰か取り上げないだろうか。合唱界ではカプレの曲、よく歌いましたが。

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作曲 アンドレ・カプレ(1879-1925)
原詩 ヴィクトル・ユゴー

(無題詩)
Viens! - une flûte invisible
おいで!目に見えぬフルートよ
Soupire dans les vergers. -
果樹園のもとの溜息よ、
La chanson la plus paisible
一番穏やかな歌は
Est la chanson des bergers.
羊飼いたちの歌。

Le vent ride, sous l'yeuse,
風は漣を立てる、柊の木の下で
Le sombre miroir des eaux. –
水の薄暗い鏡に。
La chanson la plus joyeuse
一番楽しい歌は、
Est la chanson des oiseaux.
鳥たちの歌。
*yeuse...セイヨウヒイラギカシ。

Que nul soin ne te tourmente.
どんな心労もあなたを苛むことがないように、
Aimons-nous! aimons toujours! -
私たちは愛しあおう、愛そう、ずっと!
La chanson la plus charmante
一番魅力的なのは、
Est la chanson des amours.
恋人たちの歌。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。