ガブリエル・フォーレ 歌曲集「よき歌」1

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
03 /31 2012
ガブリエル・フォーレ 歌曲集「よき歌」

原詩 ポール・ヴェルレーヌ(1844-1896)
作曲 ガブリエル・フォーレ(作曲1892-94年)



第一曲「後光のなかの聖女様」

Une Sainte en son auréole,
後光のなかの聖女様、
Une Châtelaine en sa tour,
塔のなかのお姫さま、
Tout ce que contient la parole
あなたはすべてを包容する、
Humaine de grâce et d'amour.
ひとの気品と愛の言葉を。
*le parole humaine

La note d'or que fait entendre
黄金の調べを響かせる
Le cor dans le lointain des bois,
森の奥の角笛は、
Mariée à la fierté tendre
優しい誇りとひとつになる、
Des nobles Dames d'autrefois;
いにしえの貴婦人の(誇りに)。

Avec cela le charme insigne
その輝かしい魅力とともに
D'un frais sourire triomphant
爽やかで勝利者のような微笑が
Éclos dans les candeurs de cygne
花開く、白鳥の純真さと
Et des rougeurs de femme-enfant;
童女の紅顔のうちに。

Des aspects nacrés, blancs et roses,
真珠のような容貌、白色と薔薇色、
Un doux accord patricien:
貴族にふさわしい甘美な調和;
Je vois, j'entends toutes ces choses
ぼくは見る、ぼくは聴く、これらすべてを
Dans son nom Carlovingien.
君のカロリング朝の名前のなかに。

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フォーレの歌曲集「よき歌」は、どうも違和感を持ち続けていた。これより前に作曲した「月の光」や歌曲集「ヴェネチアより」の流麗をきわめた作風と異なって、この第一曲のプリミティブにすら聴こえる伴奏や旋律..これは一体何だろうと首をひねってばかりいた。しかし今回第一曲の歌詞に向き合ってみると、分かってきたように思う。当時25歳のヴェルレーヌとわずか16歳の若妻マチルド・モーテ。それを描いた40歳半ばのフォーレ。この第一曲ではマチルドのテーマが現れる。まさにles candeurs de cygne et des rougeurs de femme-enfantであって、古風な彼女の名前が呼びおこす古楽のような響きをフォーレは意識していたのだろう。

マチルドを見つめるヴェルレーヌと、ふたりをみつめるフォーレの三人の意識が不思議にからみ合うこの歌曲集。弦楽合奏版で聴くと、その対位法的な面白さがよく分かる。もう一度第一曲から聴いてみようと思う

マチルドのテーマ
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