ワーグナー 「パルジファル」より  レジーヌ・クレスパンのクンドリー

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10 /31 2010


ワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルジファル」

第二幕
クンドリー
...
Ich sah das Kind an seiner Mutter Brust,
私は母の胸に抱かれた子を見た、
sein erstes Lallen lacht mir noch im Ohr;
その子の初めての舌足らずの笑い声は、今も耳に残ってる
das Leid im Herzen,
心の中は悲しかった
wie lachte da auch Herzeleide,
ヘルツェライデも何て笑ったことか
als ihren Schmerzen
苦悩の中でも
zujauchzte ihrer Augen Weide!
目に入れても痛くないわが子の(笑い声に)!

Gebettet sanft auf weichen Moosen,
そっと柔らかな苔の上に寝かせ、
den hold geschläfert sie mit Kosen,
愛撫して眠らせ、
dem, bang in Sorgen
不安に怯えながら、
den Schlummer bewacht der Mutter Sehnen,
母親のまなざしが眠れる子を見守り、
den weckt' am Morgen
朝に子を目覚めさせたのは
der heisse Tau der Muttertränen.
母の涙の熱い露。

Nur Weinen war sie, Schmerzgebaren
彼女はただ涙に暮れ、苦悩の身
um deines Vaters Lieb' und Tod;
夫の愛と死を思って。
vor gleicher Not dich zu bewahren,
あなたを同じ目に遭わすまい、
galt ihr als höchster Pflicht Gebot.
その事を至上の掟とした。

Den Waffen fern, der Männer Kampf und Wüten,
武器や男たちの闘争や憤怒から遠ざけ
wollte sie still dich bergen und behüten.
あなたをそっと守り保護しようとした。
Nur Sorgen war sie, ach! und Bangen:
彼女はただ不安に駆られ、ああ!心配したの
nie sollte Kunde zu dir hergelangen.
外の消息があなたに届かないようにと。
Hörst du nicht noch ihrer Klage Ruf,
あなたには聞こえないの、彼女の嘆き声が
wann spät und fern du geweilt?
遅れて遠くに居残ったときの?

Hei! Was ihr das Lust und Lachen schuf,
ああ、彼女は何と喜び、笑ったことだろう、
wann sie suchend dann dich ereilt;
あなたを捜し、そしてつかまえたとき
wann dann ihr Arm dich wütend umschlang,
彼女の腕であなたを激しく抱きしめたときに
ward es dir wohl gar beim Küssen bang?
あなたは彼女のキスが怖くならなかった?
Doch, ihr Wehe du nicht vernahmst,
でもね、あなたは尋ねなかった、彼女の苦しみや
nicht ihrer Schmerzen Toben,
彼女の激しい痛みについて。
als endlich du nicht wieder kamst,
それどころか、しまいには二度と戻らず
und deine Spur verstoben.
跡も残さずに消えた。

Sie harrte Nächt' und Tage,
彼女は夜も昼も待った。
bis ihr verstummt die Klage,
彼女の嘆き声は途絶え、
der Gram ihr zehrte den Schmerz,
心痛が苦しみを消耗させ
um stillen Tod sie warb:
静かな死を彼女は求めた。
ihr brach das Leid das Herz,
悲しみが彼女の心臓を破り、
und - Herzeleide - starb. –
そしてーヘルツェライデは-死んだ。

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Youtubeで聴くことができるクレスパンの未知の音源が、あまりに素晴らしいのでもうひとつ。「パルジファル」第二幕で、罪の女クンドリーが主人公パルジファルを誘惑する場面で、彼の母ヘルツェライデの死を告げるくだり。ジョルジュ・プレートル指揮フランス国立放送交響楽団、1961年の録音とあるが、このクレスパンの歌! 明晰で、流麗で、静かで、なんとも言えない奥深さをたたえたこの歌! ぜひ全曲を聴いてみたい! フランスにはこうしたワーグナー演奏の伝統があったのか。

「パルジファル」三宅幸夫編訳 池上純一編訳 日本ワーグナー協会監修 (白水社、2000年)を参考に逐行訳を作ってみたが、誤りを加えただけかもしれない。同書の精緻な傍注に圧倒された。
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