ドビュッシー 『抒情的散文』2

クロード・ドビュッシー(1862-1918)
05 /30 2010
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歌曲集『抒情的散文』 Proses lyriques
作詞・作曲 クロード・ドビュッシー (1892-93年、30歳)

第二曲 「砂浜」♪ De grève

Sur la mer les crépuscules tombent,
海の上に落ちる黄昏は、
Soie blanche effilée.
ほぐれた白い絹糸。
Les vagues comme de petites folles,
波は愚かしい小娘のよう
Jasent, petites filles sortant de l'école,
囀りながら、小娘たちは学校から出てきて
Parmi les froufrous de leur robe,
さらさらと制服の衣擦れ音を立てる
Soie verte irisée!
緑色の絹を虹色に輝かせながら!

Les nuages, graves voyageurs,
雲は陰気な旅人で
Se concertent sur le prochain orage,
しめし合わせて、やがて雷雨を起こす
Et c'est un fond vraiment trop grave
それは全く、陰気な背景だ、
A cette anglaise aquarelle.
このイギリスの水彩画には。

Les vagues, les petites vagues,
この波、小波は
Ne savent plus où se mettre,
どこに身をおくべきか、もう分からない
Car voici la méchante averse,
なぜなら、意地の悪い驟雨が
Froufrous de jupes envolées,
さらさらとスカートを吹き上げ
Soie verte affolée.
緑色の絹を乱すから!

Mais la lune, compatissante à tous,
しかし月は、皆を思いやって
Vient apaiser ce gris conflit,
灰色の争いを鎮めにくる、
Et caresse lentement ses petites amies,
そして小さな友達(波)をゆっくりと愛撫して
Qui s'offrent, comme lèvres aimantes,
与える、魅力的な唇のように*
A ce tiède et blanc baiser.
温かい白いくちづけを。
*三日月の比喩か?

Puis, plus rien...
それから、もう何もない・・・
Plus que les cloches attardées des flottantes églises,
波に漂う教会の、遅れた鐘の響きだけ。
Angelus des vagues,
波の夕べの鐘の音、
Soie blanche apaisée!
白い絹の安らぎ!

* * *

ドビュッシーは『抒情的散文』の前にヴェルレーヌの詩に多数付曲しているが、そのなかにはこの詩に共通する作品がある。たとえば『3つの歌曲』の「海は大聖堂よりもさらに美しい」ではさまざまな音と光を放つ大海原、波から聞こえてくる鐘の音色が描かれていたし、初期の『マンドリン』では、登場人物たちの服の色彩が動きのなかで溶け込んでいくさまが描かれ、『ベルギー風景-木馬』では、賑やかな市井の風景が描かれていた。

このドビュッシーの散文詩はそれら先行作品を踏まえたように思われる。最後に賑やかな光景が、教会(海)の鐘の音とともに静まる、これも『ベルギー風景-木馬』と同じだ!

晦渋な第一曲と異なって、譜面をみるととても簡潔な印象を受ける。さざ波の音を描くトレモロの音型は終始響き続けて波と雲との争いに高揚する箇所では、実に自然にざわめく海と空を描いてみせる。色彩豊かなことば-黄昏、白、緑、水彩画、虹色、灰色-を反映した、さまざまな音階。登場する自然-波(女学生)、雲(旅人)、月(仲裁人)はみな擬人化されていて、夕べの海と街角の情景を重ねて描いた、音による興趣豊かな小戯曲。

ドビュッシーの描く海は、どれも本当に素晴らしい!


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