ホフマンスタール/R・シュトラウス「アラベラ」 第一幕

リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)
03 /30 2009
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この素晴らしい幻想と調和の詩人ホフマンスタールと、当代最高の作曲家だったリヒャルト・シュトラウスの共同制作したオペラを、聴いてみたくありませんか?例えば両者の最後の共同作品「アラベラ」(1933年初演)など。

舞台は1860年代のウィーン。

ウィーンのある零落貴族に、アラベラ(姉)とズデンカ(妹)のふたりの娘がいた。気ままなアラベラは社交界の華として多くの求婚者に取り巻かれ、優しいズデンカは実家の没落のために「少年」として育てられている。それでもふたりはとても仲のよい姉妹だった。

ズデンカ(男性型でズデンコと呼ばれている)は、アラベラに振られて自殺まで思いつめている「親友」がいて、内心では彼を愛している。一方でアラベラはそんなことは気にもとめず、いつか心から愛する男性に出会うことを夢見る...

一方で、いよいよ金に窮した父は、軍人時代の富裕な旧友にアラベラの写真を送り、「金になる」求婚者を見つけようとする...

この映像の2分頃からはじまる第一幕のアラベラのアリア「だけど本当に、私のための人がこの世にいるのなら...Aber der Richtige, wenn's einen gibt..」が、姉妹の異なった恋への思いを歌い上げて実に魅力的だ。ルネ・フレミングがアラベラを演じた映像の、叙情的なズデンカ(ユリア・クライターという新進のソプラノらしい)。伝説の美貌のソプラノ、リサ・デラ・カーサの映像など。ことばの響きも音楽も最高に素晴らしくて、陶酔の一言。

これは、姉妹ふたりが共に愛する人と結ばれるまでの内的成長を描いた作品。そして第二幕で求愛者たちの情熱に心を開いたアラベラとズデンカは、本当に心豊かな女性に変貌していく。

オペラの伝統(「男装の少女」や「金目当ての花婿探し」etc)を踏まえながら、新鮮な主人公を造型したホフマンスタールとR・シュトラウスの見事な筆。おとぎ話のように思える筋書きが、ストーリーが進むにつれて、まるで現代の寓話のような光を放って。(続)


アラベラ:
Aber der Richtige wenn’s einen gibt für mich auf dieser Welt
だけど本当に、私のための人がこの世にいるのなら、
der wird einmal dastehn da vor mir und wird mich anschaun und ich ihn,
わたしの前に立ってわたしを見つめるなら、わたしもその方を見つめる、
und keine Zweifel werden sein und keine Fragen,
なんの疑いもなく、なんの問いかけもなく、
und selig werd’ ich sein und gehorsam wie ein Kind.
ただ嬉しくて、子供のように神妙になるわ。

ズデンカ:
Ich weiß nicht wie du bist, ich weiß nicht, ob du Recht
あなたがどんな人なのか、正しいのか私は分からない。
hast, dazu hab’ ich dich viel zu lieb!
でもわたしはお姉さんがとても好き。
Ich will nur, daß du glücklich wirst mit einem, der’s verdient!
わたしはただ、ふさわしい人と一緒になって、幸福になってほしい。
und helfen will ich dir dazu.
そのためにお役に立ちたいの。
So hat ja die Prophetin es gesehn, sie ganz im Licht,
占い師が言っていたわ、姉さんは明るいところへ行き、
und ich hinab ins Dunkel.
わたしは暗闇に落ちていくって。
Sie ist so schön und so lieb – ich werde gehn, und
あなたはとても美しくて愛らしい、わたしは行って
noch im Gehn werd’ ich dich segnen, meine Schwester
あなたを祝福しましょう、お姉さん。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。