九条良経 - ささのはは みやまもさやに

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
11 /30 2008
九条良経の歌は新古今集に79首(集中3位)入撰した。その氷のようにシャープな表現でありながら、なんとも言えない余韻と妖気の漂う作風は、早く同時代から畏敬を受けてきた。近くは塚本邦雄、石田吉貞氏らも、藤原定家よりも良経の歌を上位に置いている。その本領をみせる歌が、新古今の冬歌にもみられる。
 
笹の葉はみ山もさやにうちそよぎ氷れる霜を吹く嵐かな
九条良経(新古今 冬歌616)
 
これは周知の人麿歌「笹の葉はみ山もさやにさやげども我は妹思ふ別れ来ぬれば」(万葉集第2巻-133)の本歌取りだが、この歌の前には藤原清輔による本歌取りも併置されている。「君こずはひとりや寝なん笹の葉のみ山もそよにさやぐ霜夜を」。この何とも穏やかでロマン的な歌にくらべて、良経歌は何と容赦なく冷たく響くことか。
 
この良経歌は「院初度百首」(正治二年、33歳)の「冬十五首」から取られているが、そこには慄然とする冬歌が並んでいる。冬風に凍てつき、あらゆるものが枯死していく自然、ひとを思い焦がれる涙さえ凍りついて、訪れも絶え果て、夢も見えなくなった男。近代の詩人・歌人でさえ、これほど孤独な境地を描くことはなかった。
 
風をいたみただよふ池の浮き草もさそふ水なくつららゐにけり(秋篠月清集760)
 
片敷きの袖のこほりもむすぼほれ融けて寝ぬ夜の夢ぞみじかき(763)
 
木枯しにつれなく残る奥山の槇の梢も雪折れにけり(765)
 
誰を問ひ誰を待たましとばかりに跡絶え果つる雪の山里(766)
 
かきくらし峰の吹雪に炭窯のけぶりの末ぞむすぼほれゆく(768)
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