レオシュ・ヤナーチェク その音楽の秘密 II -3

08 /31 2008
1888年、ヤナーチェクの机の上には、古いモラヴィア民謡の一曲があった。「嫉妬する男」というバラットである。14小節ばかりの短い曲だが、歌詞は12番まであって、瀕死の義賊とその恋人を劇的に描いている。ヤナーチェクはその迫力ある内容と音世界に深く魅せられ、合唱曲の題材とすることを決めていた。民謡の歌い手は、身振りをまじえ、曲を自在に変奏して、この長丁場を歌いきったのだろう。しかし、その核となった小節はわずか14小節。単に反復して歌うのならば、聴き手は途中で飽きてしまうに違いない。どうすれば構成のある作品として、仕上げることができるだろうか? これは民謡を題材とした作曲家が、みな直面した難題だった。民謡そのものは短い。それ自体で完結している。古典音楽のように規模があり緊密な作品として完成させるには、どうすればいいか? ヤナーチェクの結論は、「その旋律を民謡たらしめている要素(数小節、あるいは数音)を抽出し、登場人物の心理の動きを描く無数のヴァリエーションを作って、曲を構成する。」ということだった。ヤナーチェクは自己の音楽的感性を総動員して、民謡原曲のわずか数音の音のリソースから無数の変奏を生み出し、作曲していった。(続) *カワイのフリーソフト「スコアプレーヤーFX」をダウンロードすると、 楽譜(.sdx ファイル)を自動演奏することができます。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。