藤原定家 - ならのはの そよぐいちきの

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
07 /31 2008
「拾遺愚草」の員外歌では、定家のそよゆきの名歌ばかりではなく、ずいぶん親密でくだけた姿の歌も見ることができる。



このごろは賤が伏屋の垣ならび涼しく咲ける夕顔の花

ならの葉のそよぐ一木の下かぜに契らで集ふ村のさとびと

月待つと言はでぞ誰も眺めつる閨にはうとき夏の夜の空

(拾遺愚草 員外 一字百首 夏十五首)


この「一字百首」は建久元年六月(定家29歳)に、物忌みで籠居していた際のつれずれに一気に詠んだという百首歌。一首の最初の一字を順にたどると、季節の風物や感慨が詠みこまれているという文字遊びで、夏の部は「ほととぎす/こ(と)こなつ/はなたちはな」。これらは「こ」「な」「つ」の歌。

この連作を通して読んでみると、夏の農村のさまざまな風物が次々と描かれていて、一幅の田園画をみる思いだ。その村の垣根には夕顔が咲き並び、涼しい楢の木陰には、村の人々が約束もしていないのに三々五々集まってくる。彼らは日が沈むまで世間話に笑いさざめくのだろうか。そして夜になると人々は寝屋を抜けだして、何も言わずにただ月を眺めている・・こんな文人画を思わせる情景も、定家は歌で描いていたのだなと思う。人にみせるためではなく、自分だけの楽しみの歌として。




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