式子内親王 - すずしやと かぜのたよりを

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
06 /29 2008
涼しやと風のたよりを尋ぬれば繁みになびく野べのさゆりば
式子内親王(風雅集 夏歌392)


乱れ蘆の下葉なみよりゆく水の音せぬ波の色ぞ涼しき
後鳥羽院(同419)

絢爛豪華な和歌の黄金時代、新古今時代。多くの歌人が修辞の技巧を尽くし、錦繍ばりの絵画的描写を繰り広げた歌の数々。ついに後代には再現されなかったエポックな時期。その歌の遺産はどのように享受されたのだろうか。

新古今から約150年を経て、風雅集の撰者たちが撰んだのは、こうした自然の音と色彩に静かに耳をすませる歌だった。吹き渡った風のたよりを追っていって見つけた、夏の繁みに隠れるように咲く小百合の花。耳にもつかないようなかすかな音は、生い繁る蘆の葉陰を流れる水の音。思いがけないほど涼しげにみえる、その澄んだ水の色。無音の音、透明な色彩といおうか、それらも新古今の歌人たちの繊細と洗練を極めた感覚がとらえた、自然美のひとつの極致だった。

「音せぬ波の色」、それは蘆の葉の鮮やかな緑、夏の太陽の光も映していただろうか。水面を反射するさまざまな色彩を思わせる、印象的な秀句。


ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。