紀貫之 - よしのがわ いはなみたかく

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
04 /29 2008
吉野河いはなみたかくゆく水の はやくぞ人を思ひ初めてし
紀貫之(古今集 恋歌471)

序詞の技巧の好例として、同じく古今集入撰の貫之歌から。これは「逢わずして慕う恋の歌」の一首。



この歌も「吉野河」から「ゆくみずの」までは、「はやく」を導くための序詞。その吉野の早い流れのような勢いでわたしは恋に落ちてしまった、という。そして序詞は岩も越えてゆく波のようなたぎる思いと、その波にのまれてゆく運命の転変をも暗示する。

古今集には「吉野河」を初句とする歌が5首あるが、うち4首は恋歌で急流を恋の激情にたとえて歌う。当時の宮廷人には、吉野川の荒々しい自然と抑えのきかない恋情とが二重写しになったようだ。同工のより切羽詰った恋情の歌を挙げよう。

吉野河いは切りとおしゆく水の おとにはたてじ恋はしぬとも
読人しらず (古今集492)

「吉野川の岩を切り通して流れる水が烈しい音を立てる、そのように耳に立つ噂になるようなことはしません、たとえ恋焦がれて死ぬようなことになっても。」



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