藤原定家 - くもにふき かぜもおよばぬ

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
11 /29 2007
馬を走らせ続けて、公主のもとにようやく辿りついた氏忠は、公主の美貌(「清くろうたげなること、ただ秋の月のくまなき空に澄みのぼりたる心地ぞする」)、その素晴らしい琴の音色にたちまち魅了される。氏忠は17歳、公主は20歳、ふたりの心は、まず琴の合奏として通い合う。



「ただ夢路に惑ふ心地ながら・・この音につけて(琴を)掻き合わせれば、わが心も澄みまさるからに、すずらに深きところ添ひて、やがて同じ声に音の出づれば、手に任せてもろともに弾くに、たどるところなく弾き取りつ。」

合奏の描写として、これだけ情感のこめられた描写がほかにあるだろうか。

こうして両者は夜が明けるまで琴を共に弾き続ける。そして夜が明けてゆき、人々が公主を迎えに来る物音がすると、ふたりは歌を贈答して再会を誓う。氏忠は涙にむせび、公主はひどく思い乱れて空を見上げながら。

雲に吹く風もおよばぬ波路より問ひ来ん人はそらに知りにき 
華陽公主
「雲に吹く風も届かない波路の彼方から、あなたが尋ねてくることは、それとなくわかっておりました。」

雲の外遠つさかひの国人もまたかばかりの別れやはせし
氏忠
「雲の彼方の遠い国から来た私も、これほどの悲しい別れはしたことはありませんでした。」

(続)


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