西園寺公経 - きえかへり かぜにただよふ

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
09 /30 2007
消えかへり風にただよふ沫雪のあはれ思ひの行方しらせよ
西園寺公経(千五百番歌合 恋三)

季節違いだけれど、雪を詠った秀歌を取り上げる。公経の秋歌の名歌は既に取り上げたので。


「泡雪のあはれ」と音を連ねた秀句は、式子内親王の「春くれば心もとけて淡雪のあはれふりゆく身を知らぬかな」をはじめ類歌がみられるが、「消えかへり風に漂う」という詩的な情景描写は素晴らしい。この上句の儚げな泡雪に対比されるのが下句の「思ひ」で、これは「重し」を掛けていると思われる。

風に舞う淡雪にむかって、作者は自分のこの深い恋の物思いがどこに行ってしまうのか教えてくれ、と呼びかける。詠嘆で終わる終句が、今も目前を漂っている雪のひとひらを思わせる。軽みと重み、技巧と真情とが不思議に交錯した一首。

作者、西園寺公経(きんつね、1171-1244)は後鳥羽帝時代の宮廷で、鎌倉幕府と密接な関係にあった実力者。歌風は新古今調の幻想歌のなかに執拗なほど念入りな修辞をみせ、権力に執したという人柄の一端を思わせる。百人一首歌「花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり」。


ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。