藤原定家 - しもまよふ それにしをれし

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
02 /27 2007
霜まよふ空にしをれし雁がねのかへるつばさに春雨ぞふる
藤原定家 (新古今集 春歌63)





定家の後期の春歌。この歌にも、時と空間の隔った2つの世界(上句下句が照応する)を結ぶ手法が見られる。

上句は秋、霜の降りる寒空をさ迷いながら北から飛来した雁の姿、下句は春になり、北へ飛び立ってゆく雁。打ちしおれていた雁は生気を取り戻し、柔らかに降る春雨を翼に光らせながら、北を指して帰ってゆく。「しおれし」という冷たいI音による過去形と、「春雨ぞふる」という現在形のおおらかな響きで終止した対比が、雁の2つの姿と大気の寒暖さえ映し出しているかのようだ。

また、新大系本の引く中世の歌論書によれば、「雁 八月柳の末に風ふくとき、常世の国より来て、二月に帰るといへり」という。それを読んで、良経の次の歌の哀切さを初めて理解した。春になり新緑が野を覆う時に、 彼方の世界へと還ってゆく鳥。

ただ今ぞかへると告げてゆく雁をこころにおくる春のあけぼの
(秋篠月清集113)

なれなれてかど田の沢にたつ雁の涙の露は花におきけり
(同956)




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