永福門院 - きぎのこころ はるちかからし

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
12 /29 2006
木々の心花近からし 昨日けふ世はうすぐもり春雨のふる
永福門院(玉葉集132)

京極派最高の女流歌人、永福門院の歌。この人の歌には母性そのものを感じる。ちょっと早いかもしれないが、春の到来を予感する歌を一首。




言葉遣いはとても平易だ。春の近づいた冬のある日、空には薄い雲がたちこめて、きのうから春雨が降っている。この雨に木々は花を咲かせる時も近いことを感じるだろう、という歌。

この「木々の心」と言い切ってしまう感性は素敵だ。新緑が、雪を解かす暖かい雨のなかに育まれていく感覚、そして木々がやがて新たな花を咲かせるのを、自然のなかで共に感じ、心待ちにしている作者の豊かな心を感じ取ることができる。そして「春雨のふる」という現在形で終止したことで、読者も春雨の降る窓辺にいるような、不思議な共時性が生まれた。永福門院のほかには誰も詠むことのできなかった、温かみと余韻とを残す一首。

今年の歌の部はこれで終了とします。
お読み頂きありがとうございました。

来年はもう少し毛色を変えて書いてみたいと思いますが、予定は未定です。よいお年をお迎えください。




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