藤原為氏 - あさまだき ひとよりさきと

コンデジ(Olympus & Sigma)と日記
11 /30 2006
朝まだき人より先といそぎてもなほ跡惜しき野辺の白雪
藤原為氏 (続後拾遺 冬歌493)

「早朝に人より先に新雪に足跡をつけようと急いでいるが、やはり足跡を野の白雪につけてしまうのは惜しい気がする。」






このような思いは多くの人が子供の頃、雪の日に経験しているのではなかろうか。夜の間に降り積もった雪が早朝の光のもとに輝いて、一面に広がっている。いつも通るあの野に一番乗りして、新雪に足が沈む感覚を楽しみながら、自分の足跡を思うままにつけてみたい。けれど、こんなきれいに積もっているなら、足跡をつけてしまうのは惜しい気がするな、という歌。

作者藤原為氏 (1222-1286) は御子左家嫡流の二条家の祖。父為家の遺産をめぐって、その後妻阿仏尼(「十六夜日記」の著者)と争ったことで著名。弟2人の家系(京極家、冷泉家)と対立して二条家風の和歌を推し進め、数多くの勅撰集の撰者をその家系から輩出したが、京極流の評価が高い今日では、保守派として悪役となることが多い。しかしこんな天真爛漫な、童心そのものの歌を詠んでいることに、別の一面を垣間見る気がする。

こうした歌をすべて性的な比喩とする曲解には、従わない。思い邪なるものに災いあれ。



ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。