ロドリーゴ 歌曲「4つのセファルディムの歌」2

ホアキン・ロドリーゴ(1901- 1999)
05 /25 2015
ロドリーゴ 歌曲「4つのセファルディムの歌」2 CUATRO CANCIONES SEFARDÍES

歌詞 原作者不明、ヴィクトリア・カムヒ(作曲者の妻)による編集。
作曲 ヨアキン・ロドリーゴ(1965年)

*セファルディはイスラム時代のイベリア半島で繁栄し、レコンキスタと共に半島を追われ世界中に移住したユダヤ人の有力な一派。



III. 「子守り歌」Nani, Nani(05.30)                
(祖母)
Nani, nani, nani,
おばあちゃん、おばあちゃん
nani, nani, quere el hijo,
おばあちゃんはこの子が大好き、
de la madre,
ママの
de chico se haga grande.
この子はおっきくなったね。

(母)
Ay, ay, durmite mi alma,
さあ、さあ、おやすみなさい、愛しい子よ
durmite, mi vida,
おやすみなさい、私のいのちの子よ
que tu padre viene
パパが帰ってくるわ
con mucha alegría.
上機嫌でね。

(父)
Ay, avrimex la puerta,
ドアを開けておくれ、
avrimex mi dama, avrimex!
おまえ、開けておくれ
Que vengo muy cansado
パパはくたくただよ
de arar las huertas.
畑を耕してたからね。

(母)
Ay, la puerta yo vos avro,
はい、ドアを開けますわ、
que venix cansado,
疲れて戻られたんですから
y verex durmido
ご覧なさい、眠っていますわ
al hijo en la cuna.
この子は揺りかごで。

nani→nana「子守り歌」、児童語で「おばあちゃん」の意味もある。quere→querer 望む、愛する、haga→hacer(接続法現在、一・単)、huerta畑、果樹園(特にバレンシア・ガルシア地方の灌漑地域)、Avro→abierto、venix→venís

IV. 「浅黒い」とみんな言うMorena me llaman(08.37)
"Morena" me llaman,   
「浅黒い」とみんな言う。        
yo blanco nací,
あたしは生まれつき白いのに。

"Morena" me llaman,
「浅黒い」とみんな言う。        
yo blanco nací.
あたしは生まれつき白いのに。

De pasear, galana,
澄まして歩いてるうちに。
mi color perdí,
あたしはを白くなくなったの。

De pasear, galana,
澄まして歩いてるうちに。
mi color yo perdí.
あたしは白くなくなったの。

De aquellas ventanicas
あちこちの小窓から
m'arronjan flechas,
みんなが私に矢を放つ。

D'aquellas ventanicas
あちこちの小窓から
m'arronjan flechas;
みんなが私に矢を放つ。

Si son de amores,
愛ゆえに放つなら
vengan, vengan derechas,
正面からいらっしゃいよ。

Si son de amores,
愛ゆえに放つなら
vengan derechas!
正面からいらっしゃいよ。

perdí,(直説法・点過去)→perderなくす、arronjar投げる、放る、vengan(接続法現在 三・複)venir(=come)

*未知のユダヤの音楽に初めて触れる機会だった。祈りと共に生まれ育ち、恋をし、一家の愛に包まれて子供を育て、胸を張って生きていく姿を描いた四曲の歌曲集。ときに苦いものの混じる音楽と詩を聴いているうちに、マーラーの音楽を思い出した。しかし私は四曲目、ロドリーゴの描いたユダヤの女性が好きだ。肌の色、見えない攻撃を意に介さず、胸を張って闊歩する姿。高らかな足音が街路に響くような、この誇らしい肖像画。

ロドリーゴ 歌曲「4つのセファルディムの歌」1

ホアキン・ロドリーゴ(1901- 1999)
05 /19 2015
ロドリーゴ 歌曲「4つのセファルディムの歌」CUATRO CANCIONES SEFARDÍES

歌詞 原作者不明、ヴィクトリア・カムヒ(作曲者の妻)による編集。
作曲 ヨアキン・ロドリーゴ(1965年)

*セファルディはイスラム時代のイベリア半島で繁栄し、レコンキスタと共に半島を追われ世界中に移住したユダヤ人の有力な一派。



I. 「我らに答え給え」Respóndemos
¡Respóndemos, Dios de Abraham,
我らに答え給え、アブラハムの神よ、
respóndemos!
答え給え!
¡Respóndemos, El que responde en la ora de voluntad,
我らに答え給え、願いの時にお答えになる方よ、
¡respóndemos!
答え給え!
¡Respóndemos, pavor de Yitshak,
我らに答え給え、イサクの怖れた方よ、
¡respóndemos!
答え給え!
¡Respóndemos, el que responde, en la hora de angustia,
我らに答え給え、苦悩の時にお答えになる方よ、
respóndemos!
答え給え!
¡Respóndemos, Fuerte de Yaakov
我らに答え給え、ヤコブの力よ、
respóndemos!
答え給え!
¡Respóndemos, Dios de la merkava;
我らに答え給え、メルカバーの神よ、
respóndemos!
答え給え!
¡Respóndemos, O Padre piadoso y gracioso,
我らに答え給え、おお慈愛に溢れ威厳に満ちた父なる神よ、
respóndemos!
答え給え!

II. 「僕は羊飼いの娘を愛してる」Una pastora yo ami,(3.35)
Una pastora yo ami,
僕は羊飼いの娘を愛してる
una hija hermoza,
美しい娘で
de mi chiques que l’adori,
子供のころから大好きだった、
más qu’ella no a mi,
彼女は全然僕を好きじゃないけど。

Un día que estavamos
ある日、僕らが
en la huerta asentados,
果樹園に立ってた時、
le dixe yo: “Por ti, mi flor,
僕は言った「君のために、花のようなひとよ、
me muero de amor”.
僕は死ぬほど恋焦れてる。」

hermoza→hermosa美しい人、chiques→chiquillo子供、adori,→adorar、más=more、vamos→ir(run)、estavamos→estar(=be, 線過去、一・複)、huerta果樹園、dixe→dije、muero

ロドリーゴの声楽曲は、イベリア半島の各地方のさまざまな文化と民族をひとつひとつ映し出している。この音楽的な咀嚼力・包容力は驚くばかりだ。

ロドリーゴ 歌曲集「ロサリアナ」より2

ホアキン・ロドリーゴ(1901- 1999)
05 /17 2015
「19世紀いらいガリシア人はその貧しさゆえに、おびただしい数の移民を送り出している。移民先の大半は中南米であり、キューバのカストロ首相もガリシア移民の末裔である(中略)アルゼンチンでもチリーでもウルグアイでも熱烈なロサリアのファンが今でも多い。もちろんキューバとも浅からぬ関係にある。ガリシアからの移民は20世紀に入ってもさらに続き、1911年から1965年にかけて約百万人ものガリシア人が故郷を去って行った(後略)」(『ロサリア・デ・カストロという詩人』桑原真夫 著26-27頁)

ひとつひとつ語られるガリシアの自然の美しさ、しかし、それらは二度と目にすることの無い風物、記憶の中だけにあり、新天地で世代を重ねるごとに、その記憶さえ忘れ去られてしまうものだ。しかしこの曲の第三詩節で「風そよぐ松林よ」と歌う箇所で、伴奏が急に高揚するのを聴くと、忘れかけた記憶が音を通して蘇り、目の前に写しだされる瞬間を聴いているような思いに襲われる。音楽の喚起力、詩に命を吹き込む音楽の力を感じる瞬間。

ロドリーゴ 歌曲集「ロサリアナ」より2

作曲 ホアキン・ロドリーゴ (1965年)
原詩 ロサリア・デ・カストロ(1837-85)
「ガリシアの歌」第15章より
桑原真夫 訳



第3曲「さらば川よ」Adiós ríos

Adiós ríos, adiós fontes,
さらば川よ、さらば流れよ
adiós regatos pequenos,
さらばせせらぎよ
adiós vista dos meus allos,
さらば我がまなこの故郷よ、
non sei cándo nos veremos.
いつかまた巡りあわん。

Miña terra, miña terra,
我がふるさとよ、我がふるさとよ、
terra donde me eu criéi,
母なる我が大地よ、
hortiña que quero tanto,
無花果みのる、
figueiriñas que prantéi.
我がいとしの果樹園よ、

Prados, ríos, arboredas,
牧場よ、川よ、樹木よ、
pinares que move o vento
風そよぐ松林よ、
paxariños piadores,
小鳥たちのさえずりよ、
casiña de meu contento.
思い出の小屋よ、

muíño d'os castañares,
栗林の水車小屋よ、
noites craras de luar,
月明りの夜よ、
campaniñas timbradoras
村の教会よ、
da igrexiña do lugar,
うるわしの鐘の音よ、

amoriñas das silveiras
我がひとに与えし、
que eu lle daba ó meu amor,
赤き木いちごの実よ、
camiñiños antre o millo,
玉蜀黍畑の小路よ、
¡adiós para sempre adiós!
さらば、永久にさらば、

¡Adiós groria! ¡Adiós contento!
さらば主よ、さらば主よ、
¡Deixo a casa onde nacín,
懐かしの故郷を離れ、
deixo a aldea que conoso,
愛する我が村を離れ、
por un mundo que non vin!
彼の地に渡りゆかん、

Deixo amigos por extraños,
親しき友と別れ、
deixo a veiga polo mar,
浜辺の砂浜と別れ、
deixo, en fin, canto ben quero,
嗚呼、我が愛するふるさと、
¡Quén pudera non deixar...!
この別離を誰が止め得よう!
(後段略)

ロドリーゴ 歌曲集「ロサリアナ」より1

ホアキン・ロドリーゴ(1901- 1999)
05 /10 2015
ロドリーゴが、ガリシアの国民的な女流詩人ロサリア・デ・カストロの詩4編に作曲した作品集。

この詩人について、桑原真夫氏が「ロサリア・デ・カストロという詩人」(沖積舎、1999年)という評伝を、さらに近年には詩集全訳を出版されている。前著に所収のテキスト・対訳から逐行訳にさせて頂いた。

ガリシア地方の民俗舞踊に乗って歌われる、この伸びやかな旋律!原詩集は冒頭に村祭りの情景が描かれ、海の音、川の囁き、虫の声、花の咲き乱れる渓谷と、ガリシアの美しい風物とことばが描写される。音符が一音一音、草花の香気のように大空に流れていくようだ。さあ、春のガリシアへ!



ロドリーゴ 歌曲集「ロサリアナ」より

作曲 ホアキン・ロドリーゴ (1965年)
原詩 ロサリア・デ・カストロ(1837-85)
「ガリシアの歌」第一章 第四編より

 Cantarte hej, Galicia,
歌いましょう、ガリシアよ、
teus dulces cantares,
あなたの優しい歌が
que así mo pediron
私に囁く
na beira do mare.
海の汀で。

 Cantarte hei, Galicia,
歌いましょう、ガリシアよ、
na lengua gallega,
ガリシアの言葉で、
consolo dos males,
苦しみを和らげ、
alivio das penas.
不幸を忘れるため。

 Mimosa, soave,
甘く、優しく、
sentida, queixosa,
痛々しい、ガリシアよ。
encanta si ríe,
微笑みは幸せを、
conmove si chora.
涙は苦しみを伝える。

Cal ela ningunha
このうえもなく甘く
tan dose que cante
切なく歌う。
soidades amargas,
ノスタルジアの苦しみや
sospiros amantes.
恋人のため息を。

Misterios da tarde,
謎めく夕べよ、
murmuxos da noite:
宵のざわめきよ、
cantarte hei, Galicia,
歌いましょう、ガリシアよ、
na beira das fontes.
せせらぎの水音とともに。

Que así mo pediron,
私に囁き、
que así mo mandaron,
強いるもの。
que cante a que cante
それは歌うこと
na lengua que en falo.
私の話す言葉で。

ロドリーゴ 歌曲「細やかなクリスタル」

ホアキン・ロドリーゴ(1901- 1999)
05 /06 2015
澄み切った日差しの下で、走る雲や木陰のつくる日のゆらめきと輝きに興じる親子の情景。謎めいた歌詞に、澄明なピアノの書法が素敵だ。

歌曲「細やかなクリスタル」FINO CRISTAL

原詩 カルロス・ロドリゲス・ピントス (1895 - 1985)
作曲 ホアキン・ロドリーゴ(1935年)


Fino cristal, mi niño,
細やかなクリスタルだ、わが子よ
fino cristal.
細やかなクリスタルだ。
Palomitas del aire
空中のポップコーンだね
vienen y van.
近づいて、去っていく
Redondo el sol, redondo,
太陽の周りに、ぐるりと
bajo el pinar.
松の下に。
Ligero, el viento negro
軽くて、黒い風が
corre detrás.
後ろを走っている。
Ay que ay, de mi niño
おや、ほら、わが子よ
sobre la mar.
海の上に。
Entre las nubes blancas,
白い雲の合間に
fino cristal.
細やかなクリスタルの光。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。