エマニュエル・シャブリエ 歌曲「旅への誘い」

エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)
12 /07 2014
エマニュエル・シャブリエ 歌曲「旅への誘い」 L'invitation au Voyage

原詩 シャルル・ボードレール
作曲 エマニュエル・シャブリエ 

デュパルクの作曲(1884年)に先立って書かれた、シャブリエのボードレールの詩による唯一の歌曲(1870年)。ピアノに加えてファゴットのオブリガートが付くのがきわめて珍しい。しかも第二詩節を省略したデュパルクと違い、シャブリエは全詩に作曲している。知られざる、記念碑的な傑作。

Des meubles luisants, Aux vagues senteurs de l'ambre...シャブリエはこうした語句に、ファゴットの音色を連想したのだと思う。「琥珀の仄かな香気 」を思わせる音色に。



Mon enfant, ma sœur,
愛しいひとよ、君よ、
Songe à la douceur
幸福を夢見よう、
D'aller là-bas vivre ensemble,
それはあの地で、共に暮らし、
Aimer à loisir,
心ゆくまで愛し、
Aimer et mourir
愛し、死ぬこと、
Au pays qui te ressemble.
君にふさわしい国で。
Les soleils mouillés
太陽の光は湿り、
De ces ciels brouillés
空は霞む、
Pour mon esprit ont les charmes
私の心は、その太陽に惹かれる
Si mystérieux
とても神秘的な
De tes traîtres yeux,
君の不実な眼の、
Brillant à travers leurs larmes.
涙の彼方の輝き。
Là, tout n'est qu'ordre et beauté,
そこには在るのは、すべて秩序と美、
Luxe, calme et volupté.
華麗な、静寂と悦楽。

Des meubles luisants,
底光りのする家具は
Polis par les ans,
歳月に磨かれ、
Décoreraient notre chambre,
われらの部屋を飾る
Les plus rares fleurs
希少な花が
Mêlant leurs odeurs
その芳香を溶け合わせる
Aux vagues senteurs de l'ambre
琥珀の仄かな香気に。
Les riches plafonds,
豪華な天井、
Les miroirs profonds,
奥行きのある鏡、
La splendeur orientale
東方の豪華な調具
Tout y parlerait
すべてが語る
À l'âme en secret
秘密のうちに
Sa douce langue natale.
優しい現地の言葉で。
Là, tout n'est qu'ordre et beauté,
そこには在るのは、すべて秩序と美、
Luxe, calme et volupté.
華麗な、静寂と悦楽。

Vois sur ces canaux
見てごらん、この運河の上に
Dormir ces vaisseaux
船たちが停泊している
Dont l'humeur est vagabonde;
船の本性は放浪的なのに。
C'est pour assouvir
それは満足させるためだ、
Ton moindre désir
(旅立つという)お前のささやかな欲望を。
Qu'ils viennent du bout du monde.
そのために、船は世界の果てからやって来るのだ。
Les soleils couchants
沈む太陽は
Revêtent les champs,
覆う、田園と
Les canaux, la ville entière,
運河と、街のすべてを。
D'hyacinthe et d'or;
ヒアシンスと黄金の色で。
Le monde s'endort
世界はまどろむ、
Dans une chaude lumière!
熱い光のなかで!

Là, tout n'est qu'ordre et beauté,
そこには在るのは、すべて秩序と美、
Luxe, calme et volupté.
華麗な、静寂と悦楽。
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エマニュエル・シャブリエのデュオ

エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)
08 /19 2013
『オペラ・コミック座の案内嬢とポン・マルシェ百貨店の店員の二重唱』
Duo de l'ouvreuse de l'Opéra-Comique et de l'employé du Bon Marché

作詞・作曲 エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)


シャブリエ 歌曲「幸福の島」

エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)
08 /03 2010
暑い、本当に暑い日々に、夏の海の歌を取り上げよう。
ピアノの連符のリズムが、船べりをたたく波の音に聴こえる。幸福な二人の弾む心にも。こんなロマンチックな曲もたまにはいいね。


* * *

シャブリエ『幸福の島』♪ L'île heureuse

原詩 エフライム・ミカエル (Ephraïm Mikhaël, 1866-1890)
作曲 エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)

ピエール・ベルナック(Br) / フランシス・プーランク(pf)

Dans le golfe aux jardins ombreux,
影の多い庭園のある入江で、
Des couples blonds d'amants heureux
幸福なブロンドの恋人たちが
Ont fleuri les mâts langoureux
物憂げなマストを花で飾った、
De ta galère,
ガレー船の(マストを)。
Et, caressé de doux été,
そして、優しい夏も愛撫されて、
Notre beau navire enchanté,
歓喜に満ちた私たちの美しい船は
Vers des pays de volupté:
逸楽の島を目指す、
Fend l'onde claire!
澄み切った波をかき分けて!

Vois, nous sommes les souverains
ごらん、私たちは王者だ、
Des lumineux déserts marins,
誰もいない、煌く海の王者。
Sur les flots ravis et sereins
うっとりとする澄みきった波の上に
Berçons nos rêves!
揺すろう、私たちの夢を!
Tes pâles mains ont le pouvoir
あなたの蒼白い手は、力をもっている
D'embaumer au loin l'air du soir,
遙か彼方の夕べの風を薫らせる(力を)、
Et, dans tes yeux, je crois revoir,
そしてあなたの眼のなかに、私は再び見る気がする、
Le ciel des grèves!
浜辺の天空を!

Mais là-bas au soleil,
けれどごらん、向こうで陽射しを浴びて
Surgit le cher pays vermeil
愛しい、鮮やかな紅の国が浮かぶ、
D'où s'élève un chant de réveil
その国から聞こえてくるのは、目覚めの歌、
Et d'allégresse;
そして歓喜の歌。
C'est l'île heureuse aux cieux legers
あれは大気の澄みわたった喜びの島、
Où, parmi les lys étrangers,
そこでは、異国の百合の花につつまれて
Je dormirai, dans les vergers
私は眠るだろう、果樹園のなかで
Sous ta caresse!
あなたの愛撫につつまれて!

* * *


歌曲というよりも、19世紀フランスのグランドオペラの名アリアのような作品。
作曲者エマニュエル・シャブリエは1841年の生まれだから、後輩のフォーレ(1845年生)やデュパルク(1848年生)とそれほど年は変わらないのに、歌曲に対するスタンスが全然違うのは興味深い。ボードレールの「旅への誘い」につけたデュパルクの北方的な幻想や、フォーレ最晩年の「幻想の水平線」と比べてみよう。

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ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。

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