エルネスト・ショーソン 歌曲集「温室」より

エルネスト・ショーソン(1855-1899)
07 /20 2015
ショーソンは二面性のある作曲家だ。歌曲のテキストをみても、芸術性の高い歌詞と俗っぽい三流の歌詞が混在していて(この点がドビュッシーやフォーレと違う!)、その落差が際立つ。数多くの耳あたりのいい歌曲の一方で、こんな尖鋭な曲もある。オブセッションそのもののようなピアノ伴奏は、20世紀の歌曲を先取りしていると思う。

エルネスト・ショーソン 歌曲集「温室」op.24

原詩 モーリス・メーテルラーンク
作曲 エルンスト・ショーソン (1893-93年)

第一曲「温室」Serre chaude


O serre au milieu des forêts!
おお森のなかの温室よ!
Et vos portes à jamais closes!
つねに閉ざされているお前の門よ!
Et tout ce qu'il y a sous votre coupole!
お前の円蓋の下にあるすべてのものよ!
Et dans mon âme en vos analogies!
そして私の心にあるお前の似姿よ!

Les pensées d'une princesse qui a faim,
餓えた王女の物思い、
L'ennui d'un matelot dans le désert,
砂漠の水夫の倦怠、
Une musique de cuivreaux fenêtres des incurables.
不治の病人たちの窓に響く金管の音楽よ。

Allez aux angles les plus tièdes!
もっとも生暖かい一隅に行け!
On dirait une femme évanouie un jour de moisson:
収穫の日に姿を消した女のようだ:
Il y a des postillons dans la cour de l'hospice;
ホスピスの中庭には御者たちがいる:
Au loin, passe un chasseur d'élans, devenu infirmier.
向こうを看護人となった鹿狩人が通っていく。

Examinez au clair de lune!
月明かりの下で調べてみよ!
(Oh! rien n'y est à sa place!)
(おお、場にふさわしいものは何も無い!)
On dirait une folle devant les juges,
あえて言えば裁判官の前の狂女、
Un navire de guerre à pleines voiles sur un canal,
運河に浮かぶ満帆の戦列艦、
Des oiseaux de nuit sur des lys,
百合にやどる夜の鳥、
Un glas vers midi,
真昼の弔鐘、
(Là-bàs sous ces cloches!)
(ほら、あの鐘の下に!)
Une étape de malades dans la prairie,
牧草地で憩う病人たち、
Une odeur d'éther un jour de soleil.
晴れた日のエーテルの匂い!

Mon Dieu! Mon Dieu! Quand aurons-nous la pluie,
おお神よ、わが神よ、いつ私たちは雨と
Et la neige et le vent dans la serre!
雪と風を温室で受けるのだろう!

*on dirait qn/qch...~のようだ、devenir→devenu過去分詞

ショーソンの歌曲集

エルネスト・ショーソン(1855-1899)
06 /18 2015
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ナタリー・シュトッツマンによるショーソン歌曲集のCD(RCAレーベル)を吉祥寺のディスクユニオンで購入。帰宅して早速聴いてみると、長く愛聴されているのも頷ける素晴らしく奥行きのある名唱!「リラの花咲くころ」のようなポピュラーな作品に加えて、「温室」(op.24)といった、メーテルラーンクの難解な象徴詩に付曲した作品も入っている。ショーソンの知られざる創作活動を知ることができた。

この「温室」は以前取り上げたが、小生の語学力では正直どうにもならなかった。このCDには笠羽映子さんの解説と対訳が付いているから、再度挑戦してみようと思う。これは楽しみ!

エルネスト・ショーソン 歌曲集「温室」より

エルネスト・ショーソン(1855-1899)
12 /30 2011
ショーソンの音楽には、これまで取り上げてきた作品の高雅なイメージにおよそ合わない作品もある。作品番号は24だが、実際には最後に作曲された歌曲だそうだ。滅多に演奏も録音もされない、この難解な歌曲集に向き合ってみた。

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エルネスト・ショーソン 歌曲集「温室」

原詩 モーリス・メーテルラーンク
作曲 エルンスト・ショーソン (op.24)



第一曲「温室」Serre chaude

O serre au milieu des forêts!
おお森のなかの温室よ!
Et vos portes à jamais closes!
お前の門はつねに閉ざされている!
Et tout ce qu'il y a sous votre coupole!
すべてはお前のドームの下にある!
Et dans mon âme en vos analogies!
私の心の中もお前と同じよう!

Les pensées d'une princesse qui a faim,
飢えたプリンセスの物思い、
L'ennui d'un matelot dans le désert,
砂漠の水夫のアンニュイ
Une musique de cuivreaux fenêtres des incurables.
死を待つ病人たちの窓に響くブラス音楽よ、
Allez aux angles les plus tièdes!
一番退屈なアングルに行け!

On dirait une femme évanouie un jour de moisson:
収穫の日に姿を消した女のようだ:
Il y a des postillons dans la cour de l'hospice;
ホスピスの中庭には御者たちがいる:
Au loin, passe un chasseur d'élans, devenu infirmier.
向こうを通り過ぎる鹿狩人は看護師となった。

Examinez au clair de lune!
月の光に調べてみよ!
(Oh! rien n'y est à sa place!)
(おお、場にふさわしいものは何も無い!)
On dirait une folle devant les juges,
言ってみれば裁判官の前の狂女、
Un navire de guerre à pleines voiles sur un canal,
満帆の戦列艦が運河に浮かび、
Des oiseaux de nuit sur des lys,
夜の鳥が百合にやどる、
Un glas vers midi,
真昼の弔鐘、
(Là-bàs sous ces cloches!)
(ほら、あの鐘の下に!)
Une étape de malades dans la prairie,
病人たちの牧草地での憩い、
Une odeur d'éther un jour de soleil.
エーテルの匂い、晴れた日!

Mon Dieu! Mon Dieu! Quand aurons-nous la pluie,
おお神よ、神よ、雨が降れば
Et la neige et le vent dans la serre!
雪と風が温室に!

*on dirait qn/qch...~のようだ、devenir→devenu過去分詞

エルネスト・ショ-ソン 歌曲「蝶々」

エルネスト・ショーソン(1855-1899)
12 /30 2011
歌曲「蝶々」Les papillons

原詩 テオフィル・ゴーチエ
作曲 エルネスト・ショーソン(1879-80年, op.2-3)



Les papillons couleur de neige
雪の色をした蝶々が、
Volent par essaims sur la mer;
群れをつくって海の上を飛ぶ
Beaux papillons blancs, quand pourrai-je
美しい純白の蝶よ、いつ私はできるだろう、
Prendre le bleu chemin de l'air?
空中の青い道を旅することを。

Savez-vous, ô belle des belles,
言っておくれ、おお最美の者よ、
Ma bayadère aux yeux de jais,
漆黒の目をした、わが異国の踊り子よ
S'ils me pouvaient prêter leurs ailes,
もし蝶が私に翼を貸してくれたら、
Dites, savez-vous où j'irais?
さあ言ってみて、私がどこに飛んでゆくつもりか?

Sans prendre un seul baiser aux roses,
薔薇の接吻を一度も受けることなく、
À travers vallons et forêts,
谷と森を通り抜けて、
J'irais à vos lèvres mi-closes,
私は君の半ば閉じた唇へとゆく、
Fleur de mon âme, et j'y mourrais.
私の心の花のもとへ、そして命を終えたい。

pourrai..pouvoirの直説法単純未来・一人称
pouvaient..pouvoir...si+直説法半過去・三人称複数(条件法)
mourrais..mourirの条件法現在・一人称

* * *

エルンスト・ショーソン 歌曲「魅惑」

エルネスト・ショーソン(1855-1899)
12 /29 2011
歌曲「魅惑」 Le Charme

原詩 アルマン・シルヴェストル
作曲 エルンスト・ショーソン(op.2-2, 1879-80)


Quand ton sourire me surprit,
思いがけず君の微笑みを目にしたとき
Je sentis frémir tout mon être,
私は全身が震えるのを感じた
Mais ce qui domptait nous esprit,
だけど心を靡かせたものが何なのか
Je ne pus d'abord le connaître.
そのときは分からなかった。

Quand ton regard tomba sur moi,
君のまなざしが私に向いたとき
Je sentis mon âme se fondre,
私は魂がとろけるのを感じた
Mais ce que serait cet émoi,
だけどその感情が何なのか
Je ne pus d'abord en répondre.
そのときは答えられなかった。

Ce qui me vainquit à jamais,
私を永遠に虜にしてしまったもの、
Ce fut un plus douloureux charme;
それは悲しみに満ちた魅力だった
Et je n'ai su que je t'aimais,
君を愛していたことがやっと分かったのだ、
Qu'en voyant ta première larme.
初めて君が涙をこぼすのを見たときに。

dompter馴らす、抑制する, nous→単数jeの代わり、d'abordまず、最初に
fut..être単純過去(三・単)

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サンドリーヌ・ピオーのアルバムをまとめて購入して繰り返し聴いている。どのアルバムも彼女の独特の選曲眼が利いていて、周知の曲も初めて聴くように新鮮そのもの。とくにショーソン、どの曲も彼女の軽やかで華やかな歌声に合っていて素晴らしい。この若きショーソンが歌い上げた初々しい恋、人気のある曲でさまざまな演奏がYoutubeにもありますので、是非聴いてみてください。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。