トスティ 歌曲「憧れのひと」

フレンチェスコ・トスティ(1846-1916)
02 /12 2011


Ideale「憧れのひと」

原詩 カルメロ・エリッコ
作曲 フランチェスコ・トスティ

Io ti seguii come iride di pace
私は君を追った、平和な虹のように
Lungo le vie del cielo:
天への道を伝って。
Io ti seguii come un'amica face
私は君を追った、優しい明かりのように
De la notte nel velo.
夜の黒いヴェールのなかの。
E ti sentii ne la luce, ne l'aria,
そして君を感じた、明かりのなかに、大気のなかに
Nel profumo dei fiori;
花々の香りのなかに。
E fu piena la stanza solitaria
そしてひとりぼっちの部屋は満ち溢れた、
Di te, dei tuoi splendori.
君と君の輝きに。

seguii→seguire「追う」の遠過去、iride虹(アヤメの意味もある), pace平和、lungo=along, face松明、ともしび、nette=night、stanza=room

In te rapito, al suon de la tua voce,
君にうっとりして、君の声の音色を
Lungamente sognai;
長い間夢見た。
E de la terra ogni affanno, ogni croce,
すると地上のあらゆる不安、あらゆる苦悩を
In quel giorno* scordai.
私は光のなかに忘れ去った。
Torna, caro ideal, torna un istante
戻っておくれ、愛しい憧れのひとよ、すぐに戻っておくれ
A sorridermi ancora,
そしてもう一度微笑んでおくれ、
E a me risplenderà, nel tuo sembiante,
そうすれば私には輝くだろう、きみの容貌のうちに
Una novella aurora.
新たなあけぼのが。

suon=sound、sognai..sognare「夢見る」の遠過去、ogni=every、croce十字架→苦悩、*原詩ではsogno、scordai..scordare「忘れる」の遠過去、torna..tornare「戻る」三・単、sorridermi..sorridere「微笑む」二・単、risplenderà..risprendere「光り輝く」未来・三・単

* * *
映像には邦訳が付いているが、自分で訳してみるといろんな発見がある。冒頭の詩行pace, cielo, ariaには宗教的な響きがあって、ドミソではじまるシンプルな序奏も天上の響きを描いているのかもしれない。時制は遠過去で、文字通り遠い思い出になった恋人の記憶を探っているようだ。光と声の響きだけになった憧れのひとの記憶...小曲だが、なかなか忘れがたい一曲。

トスティ 歌曲「マレキアーレ」

フレンチェスコ・トスティ(1846-1916)
02 /03 2011


「マレキアーレ」MARECHIARE

原詩 サルバトーレ・ディ・ジャコモ
作曲 フランチェスコ・トスティ

Quanno spónta la luna a Marechiare,
マレキアーレに月がかかるとき
pure li pisce nce fanno a ll'ammore...
魚さえも愛に身震いする...
Se revòtano ll'onne de lu mare:
海中の深みで
pe' la priézza cágnano culore...
色の変化に陶酔して...
Quanno sponta la luna a Marechiare.
マレキアーレに月がかかるときに。

A Marechiare ce sta na fenesta:
マレキアーレのバルコニーは心地よく、
la passiona mia ce tuzzuléa...
私の情熱は鼓動を打つ
Nu garofano addora 'int'a na testa,
カーネーションが窓辺に香りを放ち、
passa ll'acqua pe' sotto e murmuléa...
水はささやくように歌う...
A Marechiare ce sta na fenesta....ah..
マレキアーレのバルコニーは心地よく、ああ..

Chi dice ca li stelle so lucente,
星が輝いていると言うひとは、
nun sa pe st'uocchie ca tu tiene nfronte!
君の瞳の煌きを見たことがないんだ!
Sti doie stelle li ssaccio io solamente!
私はあの燃え上がる光を知ってる!
dint'a lu core ne tengo li pônte.
この魂の奥に降りてくる光を。
Chi dice ca li stelle so lucente?...
星が輝いているなんて言うのはだれ?

Scetate, Caruli, ca l'aria è doce;
目を覚まして、カルリよ、大気が心地よい。
quanno maie tanto tiempo aggio aspettato.
こんなにも長い間待ったことはなかった。
P'accompagnà li suone cu la voce
悲しい歌を伴奏するために、
stasera na chitarra aggio portato.
今晩持ってきたのがこのギターさ。
Scetate, Caruli, ca l'aria è doce!...
目を覚まして、カルリよ、大気が心地よいから!


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トスティのシンプルさには当初びっくりしたのだが、聴いている分にはすっかり慣れてしまった。今では素直に声楽曲としての美しさを楽しめる。オリーブオイルと塩とレモンだけでこんなに美味しいイタリア料理、という趣き。

この曲は楽譜の冒頭に「ナポリの歌」と書いてあって、オリジナルの歌詞に加えて標準的なイタリア語対訳が併記されている。これがまた全然違うのでびっくり。しかも最終節は意味も少し違うようだ。原詩のカルリは恋人の名前だと思うが、対訳には出てこない。原詩のli suone cu la voceが対訳ではal mesto canto 「悲しい歌に」となっているが、本当に同じ意味なのだろうか?
まあそれは措いて、オーケストラ版で聴くと大層な伴奏が可笑しくて、カレーラス全盛期の美声も気持ち良くて、いやあ、楽しくてたまらない。イタリアでは魚までアモーレ!

トスティ 歌曲「四月」

フレンチェスコ・トスティ(1846-1916)
01 /31 2011
心地よくとろけてきた頭でトスティをもう一曲。

「四月」Aprile

原詩 ロッコ・パグリアーレ
作曲 フランチェスコ・トスティ(1846-1916)

Non senti tu ne l'aria
君は感じないか、大気に
il profumo che spande Primavera?
広がっていく春の香りを?
Non senti tu ne l'anima
君は感じないか、魂の
il suon de nova voce lusinghiera?
新たな喜ばしい声の音色を?
È l'April! È la stagion d'amore!
それは春!恋の季節!
Deh! vieni, o mia gentil su' prati'n fiore!
さあ!行こう、おお愛らしいひとよ、花咲く野原へ!

Il piè trarrai fra mammole,
足もとにはスミレの花が広がり、
avrai su'l petto rose e cilestrine,
君は胸にバラと淡青色の花を飾るだろう。
e le farfalle candide
そして純白の蝶が
t'aleggeranno intorno al nero crine.
羽ばたくだろう、君の黒髪の周りを。
È l'April! È la stagion d'amore!
それは春!恋の季節!
Deh! vieni, o mia gentil su' prati'n fiore!
さあ!行こう、おお愛らしいひとよ、花咲く野原へ!

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歌詞といい旋律といい伴奏といい、このシンプルさは凄い!しかし一節目で春の香りと音色、二節目には色とりどりの春の色彩を織り込んで、さらりと終る、名シェフの美味しい前菜という感じ。イタリアワインで乾杯!

しかしこの冴えた色彩感、凄いな...
avrai su'l petto rose e cilestrine,
君は胸にバラと淡青色の花を飾るだろう。
e le farfalle candide
そして純白の蝶が
t'aleggeranno intorno al nero crine.
羽ばたくだろう、君の黒髪の周りを。

*cilestrine...花の固有名詞か?

トスティ 歌曲「可愛い口もと」

フレンチェスコ・トスティ(1846-1916)
01 /30 2011


「可愛い口もと」A vucchella

原詩 ガブリエーレ・ダヌンツィオ
作曲 フランチェスコ・トスティ、1907年・61歳

Sì, comm'a nu sciorillo
そう、小さな花のよう
tu tiene na vucchella
君は愛らしい口をしてる。
nu poco pocorillo
だけどちょっと、ちょっとだけ
appassuliatella.
萎れたよう。

Meh, dammillo, dammillo,
どうか、僕におくれ、おくれよ
è comm'a na rusella –
バラのような口を。
dammillo nu vasillo,
キスしておくれ、
dammillo, Cannetella!
キスして、カンネテッラ!

Dammillo e pigliatillo,
僕におくれ、そして僕から取っておくれ
nu vaso piccerillo
ほんの短いキスを
comm'a chesta vucchella,
君の口のように(小さなキスを)!

che pare na rusella
それはバラのようだけど
nu poco pocorillo
だけどちょっと、ちょっとだけ
appassuliatella...
萎れたよう・・・

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ピツェッティの名作「牧童たち」と同じ時期に、同じ詩人の原詩によって書かれたトスティの歌曲。カレーラスの歌声で聴いているうちに気持ちよくなってきて、何も考えられなくなってきた。脳みそがとろけそうだ。これもまた20世紀音楽...

詩はナポリ方言で書かれているそうだ。vucchellaという題名からして辞書に出てこないので、英訳からの重訳です。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。