アルフレード・カゼッラ 歌曲「14世紀の3つの歌」-3

アルフレード・カゼッラ(1883-1947)
02 /19 2011


第3曲 かわいいひとよ、ぼくは君に恋してる。
(6分50秒から)

原詩 作者不詳(14世紀)
作曲 アルフレード・カゼッラ(1923年、40歳)

Amante sono, vaghiccia, di voi;
かわいいひとよ、ぼくは君に恋してる。
Quando vi veggio tutto mi divoro.
君に会うと、ぼくはすっかり気もそぞろだ。
Esco del campo, quandoio lavoro,
畑に出て働いていても
E come pazzo vo gridando oi... oi...
キチガイのように叫ぶんだ、オイオイと。
Poi corro corro, e ò digiunto i buoi;
それから走りに走って、牛も置き去りにする;
E vo pensando di voi, chè non lavoro.
君のことを思うと、仕事も手につかない。
Voi siete più luciente che l'oro.
君は黄金よりも輝いてる。
E siete più bella ch'un fior di ginestra,
エニシダの花よりも美しく、
E siete più dolce che no è 'l cerconcello
どんなケーキよりも甘い
Dè, fatevi un poco alla finestra;
さあ、ベランダに寄っておくれ
Ch'io vi prometto ch'al vostro porcello
約束するよ、君の子豚に
Drò delle ghiande una piena canestra,
ドングリがつまった籠をあげると
E anche vi dico che al vostro vitello
いいかい、君の子牛には
Drò della paglia una piena canestra.
藁がいっぱい詰った籠を。
E a voi madonna contanto dolciata,
そして、美しく優しく現金な君には
Vi darò, Vi darò un ... un cesto d'insalata.
君にはあげよう、あげよう・・籠に、サラダを詰めて!

* * *

第3曲の歌詞はがらりと趣きが変わって、これは民衆劇の道化役者が舞台でうたう歌だと思う。詩から浮かんでくるのは、リズミカルな伴奏に乗って登場する色とりどりの衣装の道化。舞台の真ん中に立って、大げさな身振りでデタラメな歌を歌い、集まった聴衆からどっと哄笑を浴びる姿。そして女に言い寄るために、飼っている動物たちに贈り物を次々と約束して、最後に愛しの君に捧げる籠には、サラダ! ひときわ高い笑いを背に、さっと姿を消す道化。初期ルネサンスのイタリアの活気ある情景を、現代の感性による音楽で伝えてくれる面白い曲集。ブルーノ・カニーノのピアノも名演!  

この詩は語彙も言い回しもよく分からない箇所があり、不明の箇所は前掲書のあずさまゆみさんによる訳に拠った。
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アルフレード・カゼッラ 歌曲「14世紀の3つの歌」-2

アルフレード・カゼッラ(1883-1947)
02 /16 2011


第二曲「美しい鳥かごから」
(3分10秒から)

原詩 作者不詳(14世紀)
作曲 アルフレード・カゼッラ(1923年、40歳)

Fuor de la bella gaiba
美しい鳥かごから
Fuge lo lusignuolo.
夜鶯は逃げる、
Piange lo fantino, poiche
男の子は泣く、というのも
non trova lo
見つけられないから。
So oselino ne la gaiba nova;
新しい鳥かごに小鳥を、
E dice cum dolo:
そして悲しげに言う。
Chi gli avrì l'usolo?
「誰が小鳥を逃がしたの?」
En un buschetto se mise ad andare;
男の子が小さな森へ行くと
Sentì l'ozletto sì dolce cantare.
小鳥のとても優しい歌声が聞こえる。
Or bel, lusignuolo,
「ああ、美しい夜鶯よ
torna nel mio brolo.
ぼくの庭に戻っておいで。」

***
piange泣く、 fantino子供(古語)、trova→trovare見つける、oselino・ozletto不明、小鳥?

この3曲集は1曲ごとに異なった詩型の詩を選んでいて、曲想にも変化があって面白い。一曲目は定型の14行詩(ソネット)だが、これはabcba-bb-cc-bbの脚韻を踏んだ11行詩。内容も民俗詩を思わせる簡潔なもの。

この詩からはハンガリーの作曲家、コダーイがマドリカルを作曲している。時代的にふさわしい様式で付曲しようとすればこれが正解なのだろうが、カゼッラは冴えたピアノ伴奏を付けて、小さな音楽劇を描いてみせた。さっと鳥かごから飛び立つ夜鶯を描く序奏、子どもの嘆き、そして「男の子が小さな森へ行くと」と歌うくだり、男の子の足取りと怯えた心を描くピアノは、抽象画による劇を思わせる。短いけれど、さまざまな物語の情景が音のなかに浮かんでくる。

コダーイ・ソルターンによるマドリガル(1931/2年)

アルフレード・カゼッラ 歌曲「14世紀の3つの歌」-1

アルフレード・カゼッラ(1883-1947)
02 /13 2011


「14世紀の3つの歌」Tre canzoni trecentesche , op. 36

原詩 チーノ・ダ・ピストイア (1270-1337)
作曲 アルフレード・カゼッラ(1923年、40歳)

第一曲 美しい乙女、わが心の光り

Giovane bella, luce del mio core,
美しい乙女、わが心の光り、
Perchè mi celi l'amoroso viso?
なぜ私から愛らしい顔を隠すの?
Tu sai che 'l dolce riso
君は分かってるだろう、その優しい笑顔、
E gli occhi tuoi mi fan sentire amore.
その瞳がぼくに恋心を抱かせることを
Sento nel core tanto di dolcezza,
ぼくはとても甘い気持ちになるんだ、
Quando ti son davante,
君を前にすると
Ch'io veggio quel ch'Amor di te ragiona.
愛の神が君のことを語っているみたい。
Ma, poi che privo son di tua bellezza,
だけど君の美しさを僕はもっていないし
E de' tuoi be' sembianti,
君には似ても似つかないので
Provo dolor che mai non m'abbandona.
苦しみが去らない。
Però chiedendo vo la tua persona,
それでも僕は君というひとを求めてる
Disioso di quella chiara luce
明るい光に憧れてる
Che sempre mi conduce
その光はいつもぼくを導いて
Fidel soggetto de lo tuo splendore.
まばゆい君の忠実な臣下にするんだ。

sai..sapere「知る」二・単、occhi瞳、riso笑み、Sento..sentire「感じる」一・単、veggio..vedere「見る、会う」一・単(古形)、regiona..regionare「論じる」三・単、privo欠いた、不足した、bellezza美しさ、dolor(e)=pain、Peròしかしながら、chiedendo→chiedere?,sempreいつも、soggetto主題、臣下(古語)

* * *

トスティより後のイタリアの作曲家のなかで、1880年代に生まれた世代のひとり、アルフレード・カゼッラ(1883-1947)から一曲。少年時代からパリ音楽院でフォーレに学んだ。この作品は1923年の作品で、イタリアの前の世代には無いライトでリズミカルな味わいの音楽。フォーレというより新古典主義の響きで、サティやストラヴィンスキーを連想する。このテクスチャの簡潔さと明るく知的な響き、ピツェッティと並んで、これこそイタリアの20世紀音楽という感じだ。古いイタリアの14行詩(ソネット)、趣向を凝らしたレトリックと押韻の技巧的な歌がかくも生き生きと響く、そして長さの異なる各行に間奏を入れて、均整の取れた一曲に仕上げた手並み、お見事!

この曲集の第2曲が大好きなのだが、まずは順番に訳してみます。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。

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