ドヴォルジャークのオペラ「ジャコバン党員」から 第三幕、伯爵のアリア

アントニーン・ドヴォジャーク (1841-1904)
07 /12 2017
ドヴォルジャークのオペラ「ジャコバン党員」から
第三幕、伯爵のアリア

老伯爵とその勘当された息子とを仲直りさせようと、音楽の先生ベンダは説得を試みます。しかし老伯爵は、息子がジャコバン党員になったというデマに欺かれて、それを退けますが、後悔と悲しみに苛まれる、という場面です。父親の怒りと悲しみ、そして過ぎた日々への思い。ドヴォルジャークの声楽曲の真骨頂か。



伯爵 
Ó, nevzpomínej! Ten úsměv děcka,
おお、思い出させないでくれ!あの子の微笑み、
ty líce ruměné, má radost všecka!
薔薇色の頬、わが喜びのすべて!
Ty chvíle blažené se víc nenavrátí.
あの至福の時は二度と戻ってこない!

ベンダ 
Já vždycky sníval, ty slasti času dávného
私はずっと夢見ていました、昔の楽しかった時が
s dítkami syna drahého, že se vám vrátí!
愛しい息子さんの幼子とともに、あなたの許に戻ってくることを。

伯爵 
Ne, nenavrátí! Ten úsměv děcka,
いや、戻ってくることはない!あの子の微笑み、
ty líce zardělé, má radost všecka.
赤らんだ頬、わが喜びのすべて!
Ty chvíle blažené se víc nenavrátí.
あの至福の時は二度と戻ってこない!

ベンダ 
A haluz rodu starého vypučí z kmene jarého; 
老木も春には枝から新芽を吹くといいます。 
ó, pomněte, jsou vaše krev!
おお、血を分けた家族を思い出してください。

伯爵 
To děti ženy cizí,
見知らぬ女が産んだ子か、
k ní nikdy nevymizí má zášť i hněv!
あの女のことを思うと今でも腹が立つ!
Mně odcizila syna, a což víc jeho vina:
わしから息子を奪い、さらにあの息子の不行跡!
se přidat k rotě lidu zvrhlého,
いかがわしい連中の一団に加わった
jenž boří vše, co v světě svatého!
この世の聖なるもの全てをぶち壊すような連中だ!
Má krev, můj syn! To učinil můj syn!
血を分けたわが息子が、そんなことをしでかしたのだ!
Slavného rodu jméno
誇らしいわが家門の名は
na věky potupeno v kal nejnižší!
永遠に地に落ち、泥まみれとなったのだ!

ベンダ
A přece svazky otcovské lásky
それでも父親の愛という絆は
jsou nejbližší!
かけがえのないものです!

伯爵 
Ne, ne, já nemám syna!
いや、いや、私には息子はおらん!
Jdi, nemluv o něm dál!
行ってくれ、あの子のことは二度と話さないように!

ドヴォルジャーク オペラ「悪魔とカーチャ」より 第三幕女領主のアリア

アントニーン・ドヴォジャーク (1841-1904)
07 /12 2017
ドヴォルジャークの後期のオペラは旋律もきれいだし、オーケストラも凝っていて聴き応えがあります!「ルサルカ」の前年に書かれたオペラ「悪魔とカーチャ」から第三幕、悪魔の来襲に怯え、強欲さを悔いる女領主のモノローグです。

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ドヴォルジャーク
オペラ「悪魔とカーチャ」より


第三幕 女領主のアリア
KNĚŽNA(女領主)
Jak smutno v zámku - pusté síně,
何て館の中は寂しいのかしら-広間にはひとりもいない
jež veselostí hlaholily -
かつては笑い声が響いていたのに
teď ticho všude jako v hrobě,
今はどこも墓場にいるみたいに静かで
jen ohlas kroků zvučí sálem.
広間に響くのは足音だけ。
Zde rozkoš vládla - rozkoš smavá -
ここには楽しみ、微笑がいっぱいあって
a řady hostů rozjařených
陽気な客人が大勢いて
tu u jejího dlely trůnu.
玉座近くに侍っていた。
Jak sen tu život plynul krásně,
毎日は夢のように美しく流れていった
sen lásky, blaženosti, štěstí,
愛の夢、陶酔、幸せ
když náhle zazněl - jaká hrůza -
ところが突然-ああ恐ろしい-
hlas věštby, hlas děsný, nelítostný.
予言者の恐ろしい、容赦ない声が響いてきた。
Ten ze snění nás vyburcoval
あの声で私たちは夢から覚めた
tak náhle - úžas všech se zmocnil,
突如として-皆は震えあがって
že peklu propadla já bídná.
哀れな私は地獄に落とされる。
Ó, cinkot převržených číší
ああ、転がった盃の鳴る音
a bledé tváře vyděšené,
驚き青ざめた顔また顔-
vše prchalo ve zmatku divém.
誰もが慌てふためいて逃げ去った。
Já sama zbyla - v propast hříchu,
私は一人残された-罪の奈落に
jež přede mnou teď zela tmavá,
今私の前には暗い深淵が口を開け
zrak zoufalý se zahleděl.
ぞっとする目つきで私を睨んでいる-
Mne lítost chvátí - jasně vidím,
私は悔恨の念に苛まれ-はっきりとわかる
jak žila jsem, co hříchů hrozných
これまでの生き方が、何と恐ろしい罪が
se pod rozkoše květy krylo -
歓楽の花の下に隠されていたことか-
však co vše platno - pozdě - pozdě!
だが今となっては致し方ない-もう遅い!
Co zbývá mi? Jen marná naděj.
私に残されたことは? 一縷の望みもない。
Kdo mohl by mne vysvobodit?
だれが私を助けてくれよう?
Sama jsem - jak úzko je mi - úzko!
ひとりだとーなんて心細いこと!

ドヴォジャークの「ルサルカ」冒頭

アントニーン・ドヴォジャーク (1841-1904)
06 /20 2017

ドヴォジャークの「ルサルカ」の台本を読む。とても平明なチェコ語で、辞書を引けば習いたての人でも読めると思う。ただ原文は工夫もあって、ルサルカが父のヴォドニークに、湖に水浴びに来た王子への愛を語る場面、v loktech mých se koupá「私の肘の中で彼は泳ぐ」は見慣れない表現だけど、ルサルカが湖水そのものの化身であることを、巧妙に表現しているわけです。とても簡素な単語で。
(この映像の約15分からのアリアです。これがまたいい曲!)


Rusalka:
Sem často přichází
あの人はよくこの湖に来て
a v objetí mé stoupá;
私の抱擁に身を委ね
šat shodí na hrází
上着を堤に投げすてて、
a v loktech mých se koupá.
私の腕のなかで水浴する。
Leč pouhou vlnou jsem,
でも私はただの波にすぎないから
mou bytost nesmí zřít.
彼は私の存在を感じることはできない。
Ó vím, že člověkem dřív musela bych býti,
おお、まず人間にならなくては
jak já jej objímám a vinu já jej v ruce,
私が彼を胸に抱き、この腕につつみ
by on mne objal sám
彼がこの私を胸に抱いて
a zulíbal mne prudce!
私に熱いキスをしてくれるように!

ドヴォジャーク 男声合唱曲 「フィドル弾き」Huslař (抄訳)より

アントニーン・ドヴォジャーク (1841-1904)
06 /13 2017
男声合唱曲 「フィドル弾き」Huslař (抄訳)より

ドヴォジャークの声楽曲の対訳をねちねちと点検中。分からない箇所をチェコ人の音楽学者にメールで問い合わせると、100年以上の前の民謡はもうチェコ人にも分かりません、と言いつつ添削して下さる。有難うございます。
Op.番号の無い合唱曲を読んでいて、あれ、どこかで聴いたことがあるなあ、と思い、文献にあたるとちゃんと書いてあった。この合唱曲は「交響的変奏曲」に転用されていますね。だが歌詞を読んでみると、ああ、そういうことか、と目の前が開けた思い。これは歌詞を知ると、曲の解釈はがらっと変わると思いますよ。当時のチェコ人に宛てた政治的な含蓄がありますね。そしてユーモラスな自画像が。

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「フィドル弾き」Huslař (抄訳)


Já jsem huslař přeubohý,
俺は哀れなフィドル弾き
nemám jen tu hřivnu,
持っているのは才能だけ
a přec všudy se mi daří,
だがどこへ行っても見事に弾き
kam širákem kývnu.
鍔広帽を振って会釈する。

Mé píseňky polní kvítí,
俺の歌は野の花、
ono ňadra zdobí,
女たちの胸を飾り
děvčátka z těch sladkých zvuků
彼女らはその甘い響きで
pérečka* si zrobí.
花輪を編む。

A v každičkém takém květu
そしてどの花にも
pohár šumné vůně,
愛らしく香しい盃がある
by se těšil, kdo na lásku
慰めるように、愛ゆえに
v srdélenku stůně.
心のなかで苦しんでいる者を。

By se těšil, komu slzy
享受するように、涙が
napadaly k líčku,
頬を濡らす者が
pro tu milou, milučičkou
愛しく大切な
naši svobodičku.
われらの自由を。

ドヴォルジャーク「子守り歌」B.142

アントニーン・ドヴォジャーク (1841-1904)
04 /18 2017
ドヴォルジャーク「子守り歌」B.142(1885年)

オリジナルの歌詞はドイツ語ですが、楽譜はチェコ語版しか手に入らず。しかし、この柔らかい響きはチェコ語のほうが向いているのかも。アンコールピースに如何?

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「子守り歌」
Spi, mé dítě, spi,
眠れ、わが子よ、眠れ、
zamkni očka svý.
その目を閉じて。
Pán Bůh bude spáti s tebou,
神さまもきっとお前と眠るよ、
andílci tě ukolébou.
天使のようなお前を、ゆすってあげよう。
Spi, andílku, spi,
眠れ、天使よ、眠れ、
dítě spi, jen spi.
わが子よ、眠れ。

Drahé dítě, spi,
大切な子よ、眠れ、
zamkni očka svý.
その目を閉じて。
Dám ti buben, dám housličky,
お前に太鼓をあげよう、ヴァイオリンをあげよう、
nedám tě za svět celičký.
世界のすべてはあげないけど。
Spi, synáčku, spi,
眠れ、わが息子よ、眠れ、
dítě, spi, jen spi.
わが子よ、眠って。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。