ジョゼフ・カントルーブ 民謡集「オーベルニュの歌」より

ジョゼフ・カントルーブ (1879-1957)
12 /25 2011
オーベルニュ民謡
ジョゼフ・カントルーブ編曲



「バイレロ」
Pastré, dè dèlaï l'aïo, as gaïré dé boun tèms?
羊飼いさん、楽しくはないのかい?
(Dio lou baïlèro lèro, lèro, lèro, lèro, baïlèro, lô!)
È n'aï pa gaïre, è dio, tu?
私は楽しんでないわ、あなたは?
(Baïlèro lèro, lèro, lèro, lèro, baïlèro, lô!)

Pastré, lou prat faï flour, li cal
羊飼いさん、こちらの牧草地は花盛りだ。
gorda toun troupel!
こっちへおいで。
(Dio lou baïlèro lèro, lèro, lèro, lèro, baïlèro, lô!)
L'erb es pu fin' ol prat d'oïci!
ここの草の方が緑だから。
(Baïlèro lèro, lèro, lèro, lèro, baïlèro, lô!)

Pastré, couci foraï, en obal io lou bel riou!
羊飼いさん、川が私たちを隔てている、渡れないわ。
(Dio lou baïlèro lèro, lèro, lèro, lèro, baïlèro, lô!)
Es pèromè, té baô çirca!
それなら君を迎えに行ってあげよう!
(Baïlèro lèro, lèro, lèro, lèro, baïlèro, lô!)


「泉の水」
L'aïo dè rotso té foro mourir, filhoto!
泉の水はあんたの命取り、娘さん 
Nè té cal pas bèïr' oquèl', aïo, quèl' aïo,
あの水を飲んだらいけないよ、いけないよ
Mès cal prèndr'un couot d'oquèl' aïo dè bi!
飲むんならワインをコップ一杯!

S'uno filhoto sè bouol morida, pitchouno,
女の子がお嫁に行きたくなったら、かわいい子
Li cal pas douna d'oquèl' aïo dè rotso,
女の子に泉の水を飲ませちゃいけない
Aïmaro miliour oquèl' aïo dè bi!
ワインのほうがいいに決まってるもの!

* * *

濱田滋郎氏による邦訳に少しだけ手を入れました。

カントルーブ 木管三重奏「田舎風に」

ジョゼフ・カントルーブ (1879-1957)
09 /09 2011
先月白馬に行く途中のバスの中で、本郷の輸入楽譜店から電話があった。デュラン社のカントルーブの民謡編曲集「フランスの歌Chants de France」の楽譜が入荷したという。山から戻ると早速買いに行った。クリーム色の表紙の普及版の楽譜で、1948年初版。実作者や作品については何の解説も付いておらず、判るのはカントルーブの二人の息子、ピエールとグイに献呈されたということだけ。南仏語の曲には標準フランス語の対訳が付いているのが有難い。

全12曲のうち6曲はオーケストラ版で、NaxosのCDで聴くことができる。セルジュ・ボードの生き生きとした指揮に乗ったヴェロニク・ジャンスの歌声が素敵だ!

楽譜を眺めながら思う。なかなかカントルーブを実演に触れる機会は無いなあ。ぜひオーケストラ版で聴きたい。正直、ピアノ版だとあらすじだけを読んでいるような感じがする。カントルーブの作品は、色彩感豊かなオーケストラの管楽器が最高に響く瞬間だと思う。

その素晴らしさは室内アンサンブルでも味わえる。たとえばYoutubeで聴くことのできる木管三重奏「田舎風にRustique」。代表作「オーベルニュの歌」の旋律がたくさんちりばめられていて、ユーモラスで、美しくて、澄んだ山の大気が吹いてくるようで、聴くたびに笑顔になれる作品。秋の夜長にぜひ聴いてみてください。

木管三重奏「田舎風に」

第一楽章


第二楽章


第三楽章

カントルーブ 歌曲『オーヴェルニュの歌』 より

ジョゼフ・カントルーブ (1879-1957)
08 /12 2011


山にちなんだ歌曲、というとカントルーブの民謡編曲集「オーヴェルニュの歌」を思い出す。フランスの山岳地方に伝えられた民謡をオーケストラ伴奏歌曲に編曲した作品で、親しみ深いメロディ、色彩豊かな管楽器の響きが、自然の様々な物音に聴こえる。鳥の声、葉ずれの音、風の音色、谷に響くひとの声。民謡の故郷---こうした曲集を20世紀に書いて、多くの人に届けることに生涯を賭けたカントルーブ。

珍しくもミンコフスキとS・V・オッターのコンビによる映像があった。音楽祭にふさわしく、二人とも平服でくつろいだ表情。映像を通して、歌う楽しみが伝わってくる。


『オーヴェルニュの歌』 第三巻より
「紡ぎ女」 Lo fïolairé

Ton qu'èrè pitchounèlo,
小娘のころから
Gordavè loui moutous.
あたしは羊の番してた
Ti lirou lirou... la la diri tou tou la lara!

Obio 'no counoulhèto
あたしはつむをもってた
è n'ai près u postrou.
それから一人の羊飼いをつかまえた。
Ti lirou lirou... la la diri tou tou la lara!

Per fa l'obiroudèto
あたしの羊を番してくれる代わりに
Mè domound' un poutou.
キッスをひとつ、と羊飼いは所望
Ti lirou lirou... la la diri tou tou la lara!

È ièu soui pas ingrato,
そしてあたしは恩知らずじゃないから
Èn lièt d'un n'in fau dous!
ひとつどころか二つもあげた。
Ti lirou lirou... la la diri tou tou la lara!
(濱田滋郎氏訳)

* * *

カントルーブ 「ヴァイオリンとオーケストラのための詩曲」

ジョゼフ・カントルーブ (1879-1957)
02 /23 2011


フランスの作曲家の資料は少ない。楽譜も完備していないし、伝記も記念館もなく、ゆかりの地に行っても何の表示も無い。フォーレ、ドビュッシーといった著名な作曲家でも未出版の作品が残っているし、ビゼーにいたっては完全な作品カタログすら無い。独墺系の作曲家とは大変な違いだ。ましてや傍流のように思われている作曲家たち、例えばセブラック、ルーセル、マニャール、カントルーブといった人たちの資料はグローブ音楽辞典かCDの解説でわずかに知るだけ。

Youtubeのおかげでその状況は少しずつ変わりつつある。カントルーブの生前の映像や、未知の作品「ヴァイオリンとオーケストラのための詩曲」を聴くことができた。この作品、題名からしてショーソンの影響なのだろうが、ワーグナーや後期ロマン派のイディオムを使いながら、肥大や鈍磨や退廃の匂いのしない、とても健康的な精神を感じる。これを1937-38年にかけて書いたそうだが、同時代の音楽潮流から数歩後ろを歩いていて、ちっともしらけた感じがしない。この自分の音楽へのひたむきさ、無骨なまでの真面目さ、それが今は新鮮に響く。

カントルーブの合唱を使った民謡編曲はここで初めて聴いた。失恋の悲しみに、故郷を永遠に去ろうとする若者の歌。彼の耳に聴こえるのは夜鶯の歌...

カントルーブ 民謡集「フランスの歌」

ジョゼフ・カントルーブ (1879-1957)
02 /20 2011


カントルーブにはよく知られた「オーヴェルニュの歌」シリーズのほかに、「フランスの歌」という作品集がある。これはフランス各地の民謡の編曲で、オーケストラ版とピアノ伴奏版がある。前者はナクソスのCDで、セルジュ・ボード指揮リール交響楽団によるヴェロニク・ジャンスの名唱で聴くことができるが、後者はカントルーブ自身のピアノ伴奏によるリュシ・ドレーヌの独唱が唯一の録音と思う。

この朴訥なピアノと、独唱者のリュシ・ドレーヌの歌声は、今では聴くことができない独特の世界。楽譜はヂュラン社から入手できるようだが、未入手のため歌詞を紹介できないのは残念。しかし耳をすませて聴いていると、中世の村人の哀歓や、今も生きている自然の風景が、歌声に乗って目前に浮かんでくるような演奏。1949年頃の録音という。全曲は日本のレーベルから入手可能。

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。