プーランク 『愛の小径』♪

フランシス・プーランク(1899-1963)
05 /11 2010
麗しのヴェロニク・ジャンス様の音源があったので、この曲も...

『愛の小径』♪ Les chemins de l'amour

原詩 ジャン・アヌイ
作曲 フランシス・プーランク

Les chemins qui vont à la mer
海に向かう小径は、
ont gardé de notre passage
私たちが通った名残り、
des fleurs effeuillées et l'écho sous leurs arbres
手折った花と、木々の下にこだました
de nos deux rires clairs.
私たちふたりの明るい笑い声。
Hélas des jours de bonheur
ああ、幸せの日々、
radieuses joies envolées
光り輝く喜びは飛び去り、
je vais sans retrouver traces dans mon cœur
私は行く、心のなかに痕跡を見出すことなく
Chemins de mon amour
私の愛の小径を、
je vous cherche toujours
あなたを今も探している
chemins perdus vous n'êtes plus
迷い道にあなたはおらず
et vos échos sont sourds
あなたの声が響くことはない。
chemins du désespoir
絶望の小径、
chemins due souvenir
思い出の小径、
chemins du premier jour
初めての日の小径、
divins chemins d'amour.
神聖な愛の小径。

Si je dois l'oublier un jour
いつか忘れなければならないのか、
la vie effaçant toute chose
人生はあらゆることを消し去ってしまうから。
je veus dans mon cœur qu'un souvenir
でも私は心の中にこの思い出を
repose plus fort que l'autre amour.
別の愛よりも強く取っておきたい。
Le souvenir du chemin
小径の思い出、
où tremblante et toute éperdue
この小径で震えながら、うっとりと、
un jour j'ai senti sur moi brûler tes mains,
私の上にあなたの熱い手を感じたあの日、
Chemins de mon amour...
私の愛の小径...(繰り返し)

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プーランク 『ポール・エリュアールの詩による7つの歌曲』より

フランシス・プーランク(1899-1963)
05 /09 2010
『涼気と火、ポール・エリュアールの詩による7つの歌曲』♪
La Fraîcheur et le feu

作曲 フランシス・プーランク
原詩 ポール・エリュアール (1895-1952)

第1曲『眼の光』Rayons des yeux
Rayons des yeux et des soleils
日の光と太陽の光
Des ramures et des fotaines
枝の光と泉の光
Lumières du sol et du ciel
太陽と大空の光線
De l’homme et de l’oubli de l’homme –
人間のそれと人間の忘却のそれ―
Un nuage couvre le sol
雪は大地を覆い
Un nuage couvre le ciel
雲は空を覆い
Soudain la lumière m’oublie –
突如として光線が僕を忘れ―
La mort seule demeure entière
手つかずのまま残ったのは死だけ

Je suis une ombre je ne vois plus –
僕は一つの影 僕にはもう見えない
Le soleil jaune
黄色の太陽
Le soleil rouge
赤い太陽
Le soleil blanc le ciel changeant –
白い太陽 変転する空―

Je ne sais plus –
僕はもう知らない
La place du bonheur vivant –
幸福の生きている場所を
Au bord de l’ombre sans ciel ni terre –
空も大地もない影の際にいて-


第2曲『朝 枝はかきたてる』Le matin les branches attisent
Le matin les branches attisent
朝 枝はかきたてる
Le bouillonnement des oiseaux
鳥たちのさえずりを
Le soir les arbres sont tranquilles –
夕べ 木々は静か―
Le jour frémissant se repose.
昼は身震いしながら 憩う

出典 『永遠の故郷 薄明』(吉田秀和著 集英社 2009年)p.119-129
吉田秀和訳

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プーランク 『ルイーズ・ド・ヴィルモランの三つの詩』より

フランシス・プーランク(1899-1963)
05 /09 2010
『ルイーズ・ド・ヴィルモランの三つの詩』より

第一曲「リエージュの少年」Le garçon de Liège ♪

作曲 フランシス・プーランク
原詩 ルイーズ・ド・ヴィルモラン

Un garçon de conte de fée
お伽話に出てくるような少年が、
M’a fait un grand salut bourgeois,
私に改まって、いっぱしのブルジョワ的挨拶をしたの
En plein vent, au bord d’une allée,
吹きさらしの並木道のはずれ
Debout, sous l'arbre de la Loi.
法の木* の下に立ったまま
*原注 オークのことか?

Les oiseaux d'arrière saison―—
季節はずれの小鳥たちが
Faisaient des leurs, malgré la pluie,
雨にもまけず身づくろいしてたの
Et, prise par ma déraison, ―—
そうして、わたしはつい我を忘れ
J'osai lui dire; je m'ennuie.
その子に言っちゃったの”退屈してるのよ”って

Sans dire un doux mot de menteur, ―—
気休めのお世辞の一言も口にせず
Le soir, dans ma chambre à tristesse,
夕方、その子ったら、私のやるせない部屋に
Il vint consoler ma pâleur, ―—
血の気もうせた私を慰めに
Son ombre me fit des promesses.
その影だけだって、あれこれ約束したみたい・・・・・

Mais c'était un garçon de Liège
でも、あの子はリエージュの子*
Léger, léger comme le vent,
そうなの、罠にかかるようなへまはせず
Qui ne se prend à aucun piège
秋の日和の原をかけまわる
Et court les plaines du beau temps, ―—
軽い、軽い風そっくりー
*原注 リエージュはベルギーの都市の名であると共に、軽いコルクを指すフランス語。

Et dans ma chemise de nuit,
そんなこともあったので、ネグリジェ姿で
Depuis lors, quand je voudrais rire,
笑いたくなったりすると、
Ah! beau jeune homme, je m'ennuie,
ああ、素敵な坊や、私は退屈しているの
Ah! dans ma chemise, à mourir. ―—
ああ、ネグリジェ姿で、もう死にそう

出典 『永遠の故郷 薄明』(吉田秀和著 集英社 2009年)p.85-92
吉田秀和訳
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プーランク 『動物説話集』♪

フランシス・プーランク(1899-1963)
05 /03 2010
Le Bestiaire (ou Cortège d'Orphée)♪
動物説話集(あるいはオルフェオの従者一行)

原詩 ギョーム・アポリネール 挿絵 ラオル・デュフィ
作曲 フレンシス・プーランク

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1. Le Dromadaire 「ラクダ」
Avec ses quatre dromadaires
四頭のラクダで、
Don Pedro d'Alfaroubeira
アルファルベイラ生まれのドン・ペドロは
Courut le monde et l'admira.
世界を駆け、賛美した。
Il fit ce que je voudrais faire
彼は私がしたいことをした
Si j'avais quatre dromadaires.
もし私が四頭のラクダを持っていたら。


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2. La Chèvre du Thibet 「チベットの山羊」
Les poils de cette chèvre et même
この山羊の毛も、さらに
Ceux dor pour qui prit tant de peine
金羊毛、そのために辛苦を嘗めたのが
Jason, ne valent rien au prix
イアソンだが、ちっとも及ばない
Des cheveux dont je suis épris.
私が夢中になっている髪には。


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3. La Sauterelle「イナゴ」
Voici la fine sauterelle,
ここにいるきれいなイナゴは
La nourriture de saint Jean.
聖ヨハネの糧。
Puissent mes vers être comme elle,
私の詩もイナゴのようでありますように
Le régal des meilleures gens.
良き人々のご馳走に。


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4. Le Dauphin「イルカ」 
Dauphins, vous jouez dans la mer,
イルカよ、お前たちは海で遊ぶ、
Mais le flot est toujours amer.
しかし波はいつも苦い。
Parfois, ma joie éclate-t-elle ?
時にはわたしも喜びに輝くだろうか?
La vie est encore cruelle.
生きることはいまだにしんどい。


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5. L'Écrevisse「ザリガニ」
Incertitude, ô mes délices
不確かなもの、おおわが喜びよ、
Vous et moi nous nous en allons
お前と私、私たちは一緒に行こう。
Comme sen vont les écrevisses,
ザリガニがするように
À reculons, à reculons.
後ずさり、後ずさりで。


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6. La Carpe 「コイ」
Dans vos viviers, dans vos étangs,
養魚池の中で、池の中で、
Carpes, que vous vivez longtemps !
コイよ、なんとお前たちは長生きすることか!
Est-ce que la mort vous oublie,
死がお前たちを忘却してしまったのか、
Poissons de la mélancolie.
憂鬱の魚よ。

***
1918年、出征したプーランクは行軍先で作曲を続ける。その筆からは『3つの無窮動』Trois movement perpétuels、『四手ピアノのためのソナタ』、『二本のクラリネットのためのソナタ』が生まれる。戦争の中に生まれた、これら快活で繊細な作品群。

そして1919年、除隊したプーランクは初めての歌曲集『動物説話集』を作曲した。オリジナルの編成は弦楽四重奏にフルート、オーボエ、クラリネット、バソン。現在ではピアノ伴奏版で演奏されることが多い。(しかし室内楽版で聴いたほうがずっと楽しい。一曲目のラクダの行進を描くバソンの音色や、中世の旋法を使ったメロディを吹くオーボエなど、菅ならではの味わいだ)。

中世の挿絵付きの韻踏み歌を写した、アポリネールの短詩。その小気味よい言葉のリズムの遊びのなかに、翳りを落とす単語-peine, amer, en allons, mort, mélancolie。深い悲しみを一筆書きでさらりと書きつくしてしまう、あのプーランクの素晴らしい抒情がここで姿を現しつつあるように感じる。

演奏はプーランクのピアノによるピエール・ベルナックの独唱。両者は生涯の親友だった。

プーランク『黒人狂詩曲』Rapsodie Nègre♪

フランシス・プーランク(1899-1963)
04 /30 2010
プーランク『黒人狂詩曲』 Rapsodie Nègre♪

フランシス・プーランクは1899年1月7日、パリのエリゼ宮から数メートルにあるSausaies広場2番地に生まれた。裕福な芸術を愛好する一家に生まれた彼は、パリを舞台にした様々な芸術的出来事を身近に聞いて育った。幼いころからのドビュッシーの音楽への傾倒、1914年のシャンゼリゼ劇場での「春の祭典」の初演とストラヴィンスキーへの熱中、サティとの交流.、そしてピアノの教師や数多くの若い音楽家との友情...

早熟の天才ピアニストとして成長した彼は、やがて作曲にも興味を持つ。1917年、18歳のプーランク少年は、古本屋で見つけた詩集「マココ・カングルー詩集」Les poésies de Makoko Kangourouという本に惹かれる。これは黒人がフランス語で書いたと称するデタラメな詩だが、この詩集から処女作『黒人狂詩曲』Rapsodie Nègre(全5楽章)が生まれた。(当時のフランスでは黒人芸術が大流行していた。)

編成もとてもユニーク。ピアノ、2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルート、クラリネット、そしてバリトン独唱。第3,5楽章で詩の一編「ホノルル」が歌われる。(詞に意味は無い(!)そうだ)。

*最初の二楽章はこちら。学生の演奏による全曲もある。

Honoloulou Honoloulou
Katimako mosi bolou
Rata Kousira po lama.

Wata Kousi mota ma sou
Etcha pango Etche panga
tota mou nou nou nou vanga
lo lo lulu mata ma-son-

Pota ta bo bona na lou
mandes Golas Glehes ikrous
Banana lou ito kous kous
Puta la ma Honoloulou

初演(1917年12月)の演奏会では、独唱者が「おじけづいた」ために歌いたくないと言い出したので、プーランクが自分で歌った! 初演は成功して、プーランクは新進作曲家として一躍名声を得た。

書いていてめまいがするくらい、初めから最後まで冗談のような逸話だが、この作品はとても面白い。茶目っ気一杯で、もうプーランクの響きが聞こえる。初めて聴いたときはラヴェルの『マダガスカル島の歌』のパロディかと思って爆笑してしまったのだが、何と!この曲の方が8年も早く書かれている。それにしても、この作曲家プーランクを生んだ「マココ・カングルー詩集」ってどんな本だったのだろうか。一度手に取って、ページを開いてみたいと思う。


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翌1918年、プーランクは第一次大戦に出征した。

(続)

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。

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