「おと と おと と Vol.2」

演奏会とCDと高座
05 /05 2012
雨の合間をついて歌曲の演奏会に行った。

「おと と おと と Vol.2」
メゾ・ソプラノ:小泉詠子、バリトン:初鹿野剛、ピアノ:朴令鈴
2012年5月4日(金・祝) 17時開演  
谷中音楽ホール

曲目
リヒャルト・シュトラウス
歌曲4曲

ロベルト・シューマン
「ミルテの花」全曲op.25

アルノルト・シェーンベルク
プレットル歌曲集(「キャバレーソング」)7曲

知らない曲ばかりで、ほとんど予習もせずに行ったらプログラムに対訳は無くてまごついた。と思いきや、演奏の前にあらすじをピアニストや演奏者が読み上げる、という趣向で、全37曲のそれぞれを楽しむことが出来た。考えてみれば対訳を付けるより合理的で、朗読のしかたで曲のニュアンスも伝えることができる。皆さん声優ばりに表現力が豊かで、曲を二重に楽しめたような気がする。個人的に発見もたくさんあって、「ミルテの花」はクララへの献呈のエピソードが知られているが、これほど内容も曲想もバラバラの曲集(?)だとは知らなかった。ロマンチックな曲あり、オペレッタの挿入曲のような楽しい曲あり、スコットランド独立運動の悲歌あり、恐らく恋愛期間にシューマンが試みたさまざまな創作の断片をまとめた作品と思われた。結婚の献呈曲に、貧窮した未亡人や戦いの敗者の歌が入っているのもそうした事情だろうか。メゾ・ソプラノの小泉さん、バリトンの初鹿野さんも好演で、これだけ曲想がひとつひとつ違う曲を、声量も豊かに歌い分けておられたのだから素晴らしい才能である。朗読の大半を引き受けられていたピアノの朴さんの名サポートも効いていた。聴衆100人ほどのバームクーヘン形のスタジオ、室内楽や声楽にうってつけの空間で、これだけヴィヴィットな演奏を楽しむことができたとは贅沢なことだった。

後半は打って変わって、メインはシェーンベルクのキャバレーソング。出演者の衣装もがらりと変わり、舞台は煙草の煙が濃く立ちこめ、酔漢がわらいさざめく向こうに、ピアノ伴奏でコケットな女優が歌う世紀の変わり目のベルリン。歌詞は野暮と色気のきわどい一線。オーケストラ版では場末の悪臭まで臭うような気がしたが、しかし今日は、意外にも遊び心あふれた洒落た曲として聴くことができた。(シェーンベルクって、こんなにすっきりしたピアノ伴奏を付けることもできたんだ、と)。演奏者の方々もノリノリに楽しんでいたが、この曲をこれだけ楽しめる聴衆のみなさんも感性豊かだな、凄いな、と思わず周囲を振り返って感嘆した次第。しかし私は曲の響きに無性にビールが飲みたくなり、終演後に大きな拍手の鳴り響く会場から抜け出ると、懐かしげな谷中の商店街で生ビールで乾杯。今が旬の人たちによる素敵な演奏会シリーズの一日。皆様、お疲れさまでした、とても楽しめましたよ!

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ラドミル・エリシュカ指揮NHK交響楽団の演奏会

演奏会とCDと高座
01 /20 2012
今年のクラシックの演奏会は、ラドミル・エリシュカ氏指揮のNHK交響楽団の名演で聴き初めとなった。昨年4月に札幌での演奏会でドヴォジャークの大曲「スタバト・マーテル」を体験して以来、東京でシンフォニー演奏会を聴くことを心待ちにしていたが、今回はこれまで取り上げた曲を改めてN響で再演するという、日本での活動の集大成といった演奏会となった。
氏の演奏を聴いていていつも感じるのは、「どの曲も初めて聴いたような気持ちになる」ことである。あれほど何度も聴いてきたドヴォジャークの「新世界」が、なぜこれほど清新な作品に響くのか。いくつものCDで聴いた「シンフォニエッタ」が、なぜこれほど斬新で挑戦的な曲に聴こえるのか。N響という音の密度が濃く、音の重心の低いオーケストラとの演奏との組み合わせ、そしてシンフォニエッタでの各奏者の技量の高さ、それを自在にコントロールして曲をまとめあげた小柄な氏の熟練の指揮。聴衆とオーケストラからの惜しみない喝采。こうした音楽を聴く機会は、もはやエリシュカ氏以外の音楽家からは想像できない。チェコ語の響きから生まれてきた音楽。それは実に自然に流れていく、美しい抑揚とやわらかな歌に満ちていて、最近の「分かりやすいグローバリズム」に集約されつつある(ように思える)演奏には決して求められないもの、ドイツ語圏の伝統とも似て異なるもの。かけがえのない美しい伝統としか表現のしようのないものだった。

A French Song Companion

演奏会とCDと高座
09 /29 2011
The French Song Companion (Oxford University Press, 2002)を購入しました。Amazonで注文して翌々日には届いた。6,181円也。

これはフランス語の詩による歌曲を書いた作曲家の略歴と対訳(英語)を集成したもので、訳詩の載っている作曲家だけでも60人、全員では150人のデータが収録されている。A4版全568ページ。もはや辞書といっていいほどのボリューム。

著者は伴奏ピアニストのGraham JohnsonとRichard Strokes氏。この本を纏めるに至ったフランス歌曲への情熱溢れる前書きと、全く聞いたことのない作曲家の面白そうな作品についての記述を読んでいるうちに、わくわくしてきました。これら未知の作品をぜひ聴いてみたい!

フランス語圏の作曲家の情報や録音は、独墺系の作曲家に比べて圧倒的に少ないから、とても価値ある一冊。文字通りのCompanion として活用しようと思う。歌曲好きの方に強力にお勧めの一冊。

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五街道雲助師匠

演奏会とCDと高座
03 /03 2011
最近、先代の金原亭馬生師匠のお弟子さんの実演や録音もいろいろ聴いているのだが、その中で感心したのは、五街道雲助師匠のCD(朝日名人会シリーズ)。この人は昔気質の江戸の職人や芸人を描くと、そのショッパイ声が実によく活きて、テンポも口調も歯切れよく、胸のすくような名演を繰り広げる。お勧めは「淀五郎」、「名人長二」の入ったCDで、特に後者の円朝ものはなかなか高座にはかからないが、人情に篤い一刻者の指物職人、長二の造型が実にかっこよく、師匠の高座でぜひ全編を聴いてみたい!

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「昭和の名人」完結編

演奏会とCDと高座
02 /10 2011
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小学館の落語CDマガジン「昭和の名人」の新しいシリーズ「完結編」が始まった。前回はすべて東京落語だったが、今度は第一巻が桂枝雀師匠で、上方落語も未知の名人の録音が多々含まれているようだ。予告されている続巻には名人の初CD化も沢山あって楽しみ。

さっそく第一巻を買ってきて繰り返し聴いている。枝雀の「代書」はいくつも録音があって、Youtubeで映像を観ることもできるが、この録音は出来のいい実演を収録したようで、爆笑、また爆笑でございます。併録の「親子酒」もポピュラーな演目ですが、さすがに一味違う面白さ。これで490円は安いねえ。

「代書屋」

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。