アルベール・ルーセル 歌曲「空、大気そして風よ」

アルベール・ルーセル (1869-1937)
02 /04 2015
アルベール・ルーセル 歌曲「空、大気そして風よ」

「ロンサールの詩による2つの歌曲」Op.26-2
原詩 ピエール・ド・ロンサール(1524-85)
作曲 アルベール・ルーセル



20世紀になって再評価されたフランス中世の大詩人、ロンサールのふたつの詩に付したルーセルの歌曲です。ルーセル唯一のフルート伴奏による歌曲集で、それぞれに音色を生かした趣向があります。一曲目のフルートは夜鶯の声を描き、この2曲目では、遠く離れた恋人への思いが、目の前の田園をよぎる風に乗って運ばれていくような、不思議な浮遊感とともに描かれます。

Ciel, air et vents, plains et monts découverts,
空、大気そして風、平原と岩の岡、
Tertres fourchus et forêts verdoyantes,
分岐した丘陵と緑の森
Rivages tors et sources ondoyantes,
蛇行する川岸と揺らめく泉の水
Taillis rasés et vous, bocages verts,
刈り込まれた雑木林と、お前、緑の牧草地
Antres moussus à demi-front ouverts,
入り口の半ば隠れた、苔むした洞窟
Prés, boutons, fleurs et herbes rousoyantes,
野原、蕾、花と薔薇の葉、
Coteaux vineux et plages blondoyantes,
葡萄畑の岡と青銅色に輝く川岸
Et vous rochers, écoliers de mes vers!
そしてお前、岩よ、我が詩の学び手たちよ
Puisqu'au partir, rongé de soin et d'ire,
別れのとき、心痛と苦しみに苛まれで
A ce bel œil adieu je n'ai su dire,
あの美しい瞳に、さよならを告げることが出来なかった。
Qui près et loin me détient en émoi,
そのために、どこにいても、胸騒ぎがする。
Je vous suppli', ciel, air, vents, monts et plaines,
お願いだ、空、大気そして風、岡と平原よ
Taillis, forêts, rivages et fontaines
茂みよ、森よ、川岸よ、泉よ
Antres, prés, fleurs, dites-le-lui pour moi.
洞窟よ、野原よ、花よ、別れを彼女に告げておくれ、私に代わって。
(le=adiue と解した)
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アルベール・ルーセル 歌曲「雨の庭」

アルベール・ルーセル (1869-1937)
01 /27 2015
アルベール・ルーセル 歌曲「雨の庭」 Le jardin mouillé

原詩 アンリ・ド・レニエ
作曲 アルベール・ルーセル

この曲はプーランクの伴奏でピエール・ベルナックが歌った音源が残っていて以前紹介しましたが、女声版もまた魅力的です。身近な自然を描くルーセルのこの鋭敏な耳!さまざまな物音を立てながら、乾いた庭を潤していく雨。窓ガラスを叩き、壁を伝って流れ、かすかな音を立てて庭土に沁み込んでいく繊細な音色を、初めて音楽で描いたピアノ伴奏。短い音節の単語を繰り返して - peu à peu, Feuille à feuille, maille à maille ‐ 童心たっぷりに、うきうきと雨粒が跳ねるような効果をあげる歌詞!ふたつが相まって描く、ルーセル歌曲の独自の世界をお楽しみください。



La croisée est ouverte, il pleut
ガラス窓は開いていて、雨が降っている。
Comme minutieusement, à petit bruit et peu à peu
なんて細かく、小さな音を立てて、一滴一滴、
Sur le jardin frais et dormant
緑に溢れ、眠っている庭の上に降るのだろう、
Feuille à feuille, la pluie éveille
木の葉を一枚一枚、雨は目覚めさせて、
L'arbre poudreux qu'elle verdit
ほこりまみれの木を、雨は緑色に変える
Au mur on dirait que la treille
格子の入った壁の上を、雨粒は
S'étire d'un geste engourdi.
伝っていく、動けないそぶりをして。
L'herbe frémit, le gravier tiède crépite
草はふるえ、生暖かい砂利ははじける音を立てる、
Et l'on croirait là-bas
まるで、そこでは
Entendre sur le sable et l'herbe
聞こえるようだ、砂と草を踏む
Comme d'imperceptibles pas.
聞き取ることのできない足音が。
Le jardin chuchote et tressaille,
庭はささやき、身震いする、
Furtif et confidentiel
こっそりと、秘密に。
L'averse semble, maille à maille
にわか雨は、編み目をひとつ、またひとつと
Tisser la terre avec le ciel.
大地と空を縫いあわせているよう。
Il pleut et les yeux clos j'écoute
雨は降り、目を閉じて私は聞く
De toute sa pluie à la fois
すべての雨音を一度に。
Le jardin mouillé qui s'égoutte
雨に濡れた庭は、水滴を落とす、
Dans l'ombre que j'ai faite en moi.
私がつくった影のなかに。

楽譜付;

アルベール・ルーセル 交響曲第1番第2楽章「春」

アルベール・ルーセル (1869-1937)
01 /26 2015
ルーセルの交響曲第一番二楽章は、Renouveau と言う表題。これは文語で「春」の意味(Le Dico)。森に春が訪れ、新緑が瞬く間に一面の森に広がっていき、眠っていた生命が新たに生まれ変わる、そういう情景を含意しているのだと思う。そしてこのルーセルのオーケストレーション!冒頭の管楽器のソロから、森に響く鳥の声、葉擦れの音、雪が溶けて小川となり流れていく響きが聴こえてくる。これがフランスの田園の春なんだな、と耳を奪われる。

アルベール・ルーセル 歌曲「夜のジャズ」

アルベール・ルーセル (1869-1937)
01 /24 2015
間奏曲です。ジャズを取り入れた、ルーセルの歌曲の中でも異色の作品。

アルベール・ルーセル 歌曲「夜のジャズ」Jazz dans la nuit

原詩 ルネ・ドマンジュ (1888 - 1977)
作曲 アルベール・ルーセル(作曲1928年)



Le bal, sur le parc incendié
舞踏会は、紅蓮に染まった公園に
Jette ses feux multicolores,
多彩な炎を投げかけ
Les arbres flambent, irradiés,
木々は放射光を受けて燃え上がる、
Et les rugissements sonores
そして喚き声がする
Des nègres nostalgiques, fous,
それは望郷の念に狂った黒人たち、
Tangos nerveux cuivres acerbes,
神経質なタンゴ、耳をつんざくブラスの響きは
Étoufent le frôlement doux
優しい衣擦れの音をかき消してしまう
Du satin qui piétine l'herbe.
芝生を踏みならすサテンの服の(音を)。

Que de sourires épuisés,
何と多くの疲れた微笑が
À l'ombre des taillis complices,
共犯者である刈り込まれた木陰に
Sous la surprise des baisers consentent
唐突なキスを受けて、うなずいて
Et s'évanouissent...
消えていくことか...
Un saxophone, en sanglotant
サクソフォンは啜り泣き
De longues et très tendres plaintes,
その長く甘い愁嘆の声、
Berce à son rythme haletant
喘ぐようなリズムで和らげてやる
L'émoides furtives étreintes.
人目を忍ぶ抱擁の不安を。

Passant, ramasse ce mouchoir,
道行くひとよ、そのハンカチを拾っておくれ
Tombé d'un sein tiède, ce soir,
それは女の暖かい胸から落ちて、この夕べ
Et qui se cache sous le lierre;
木蔦の陰に隠れているのだから。
Deux lèvres rouges le signèrent,
2つの赤い唇が捺されている
Dans le fard, de leur dessin frais,
白粉のなかに、真新しく。
Il te livrera, pour secrets,
そのハンカチは君に打ち明けるだろう、秘密のうちに
Le parfum d'une gorge nue
あらわな乳房の香りと
Et la bouche d'une inconnue.
見知らぬ女の唇とを。

作曲者の伴奏によるシャンピの歌。

アルベール・ルーセル 交響曲第1番第3楽章「夏の夕べ」

アルベール・ルーセル (1869-1937)
01 /20 2015
ルーセル「エヴォカシオン」第三曲を通読した。楽譜にはこの曲の成立事情や背景は一切記されていない。しかし題名には強い意思がある。それは作者の東洋体験が、impression やsouvenir ではない、もっと根源的な体験であったことを暗示する。voc は神に呼ばれたことを意味する語幹だ。
ルーセルの作品を、数少ない音源の中から聴いている。興味深いのは、夜を描いた作品に一つの特徴があることだ。それはただの沈黙ではなくて、これから生まれ出でるものの胎動と期待を秘めながら、深い闇が明けようとしている、そういう夜。ルーセルの作品は存在の重みを秘めた響きがある。そうした作品を聴いていこうと思う。

アルベール・ルーセル 
交響曲第1番第3楽章「夏の夕べ」

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。

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