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ガブリエル・フォーレ 歌曲「いなくなったひと」

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
04 /21 2020
"L'absent"「いなくなったひと」 op. 5-3 (1871)

Sentiers où l'herbe se balance,
草が揺れている小径よ、
Vallons, côteaux, bois chevelus,
谷よ、丘の斜面よ、鬱蒼とした森よ、
Pourquoi ce deuil et ce silence?
なぜ喪に服し、沈黙しているのか?
"Celui qui venait ne vient plus!"
「来てくれたひとが、もう二度と来ないから!」

Pourquoi personne à ta fenêtre?
君の窓辺に誰もいないのはなぜ?
Et pourquoi ton jardin sans fleurs?
君の庭に花が咲いていないのはなぜ?
Ô maison où donc est ton maître?
おお家よ、お前の主人はどこに?
"Je ne sais pas! il est ailleurs."
「分かりません!主人はどこかへ行ってしまいました」

Chien, veille au logis! "Pourquoi faire?
犬よ、家にとどまれ!「なぜです?
La maison est vide à présent!"
家はいまからっぽです!」
Enfant, qui pleures-tu? "Mon père!"
子供よ、誰のために泣くのか?「お父さんのために!」
Femme, qui pleures-tu? "L'absent!"
女よ、誰のために泣くのか?「いなくなった人のために!」

Où donc est-il allé? "Dans l'ombre!"
彼はどこに行ってしまったの?「闇の中に!」
Flots qui gémissez sur l'écueil,
暗礁の上で呻く波よ、
D'où venez-vous? "Du bagne sombre!"
お前たちはどこから来るのか?「暗い牢獄から!」
Et qu'apportez-vous? "Un cerceuil!"
そして何を運んできたのか?「棺をひとつ!」

ガブリエル・フォーレ 作品43-1/2

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
03 /10 2020
Gabriel Faure Op.43 (1885-6)
原詩 ヴィクトル・ヴィルデール (1835 - 1892)

“Noël”「降誕祭」
La nuit descend du haut des cieux,
夜は天の高みから降りてきて、
Le givre au toit suspend ses franges.
屋根の霧氷は房飾りを吊るす。
Et, dans les airs, le vol des anges
そして、空を天使たちが飛びまわり
Éveille un bruit mystérieux.
不思議な物音を呼びおこす。

L'étoile qui guidait les mages,
東方の博士たちを導いた星は、
S'arrête enfin dans les nuages,
とうとう雲の中に立ち止まり、
Et fait briller un nimbe d'or
金色の後光を輝かせる
Sur la chaumiére où Jésus dort.
イエス様が眠る藁葺屋根の上に。

Alors, ouvrant ses yeux divins,
そのとき、神々しい目を開けて
L'enfant couché, dans l'humble crèche,
貧しい飼葉桶のなかで眠る幼子は
De son berceau de paille fraîche,
新鮮な藁を敷いたゆりかごから
Sourit aux nobles pélérins.
高貴な巡礼者たちに微笑みかける。

Eux, s'inclinant, lui disent: Sire,
博士たちは身をかがめて幼子に語る:「主よ、
Reçois l'encens, l'or et la myrrhe,
この乳香と、黄金と、没薬を受けてください、
Et laisse-nous, ô doux Jésus,
そして私たちにお許しください、おお優しいイエス様、
Baiser le bout de tes pieds nus.
あなたの素足に接吻することを。

Comme eux, ô peuple, incline-toi,
彼らのように、おお人々よ、身を屈めなさい、
Imite leur pieux exemple,
彼らの敬虔な手本に見習いなさい、
Car cette étable, c'est un temple,
なぜならこの家畜小屋は寺院であり、
Et cet enfant sera ton roi!
この幼子はお前たちの主となるだろうから!

作品41-2と共通しているのは、星々の光。
馬に乗った博士たちの足音や、星々の光を描く生彩あるピアノの描写に注目。

Nocturne「ノクターン」
原詩 ヴィリエ・ド・リラダン 
La nuit, sur le grand mystère,
夜は、その大いなる神秘のうえに
Entr'ouvre ses écrins bleus:
青い宝石箱の数々を開いてみせる、
Autant de fleurs sur la terre,
地上のあまたの花と同じほど、
Que d'étoiles dans les cieux!
空には星々!

On voit ses ombres dormantes
眠りに落ちた影たちが、
S'éclairer à tous moments,
絶えず照らし出される
Autant par les fleurs charmantes
魅惑的な花々と同じほど、
Que par les astres charmants.
魅惑的な星々によって。

Moi, ma nuit au sombre voile
私には、暗いヴェールを纏った私の夜には、     
N'a, pour charme et pour clarté,
魅力と明るさは、
Qu'une fleur et qu'une étoile
ただひとつの花と、ひとつの星のみ。         
Mon amour et ta beauté!
それは私の愛と、君の美しさ!

https://imslp.org/wiki/2_Songs%2C_Op.43_(Faur%C3%A9%2C_Gabriel)

ガブリエル・フォーレ 歌曲集「幻想の水平線」より

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
05 /22 2012
ガブリエル・フォーレの最後の歌曲集は、第一次大戦で若くして戦死したJean de la Ville de Mirmont (1886-1914) の遺作詩集「幻想の水平線」による。夭折の詩人と、死を前にした老作曲家の二人の幻想の旅は、ピアノの伴奏の高鳴る動悸のような波の音とともに幕を開ける。

全4曲を通奏する潮騒の音、洋上に輝く月の光...海をモチーフにしたフランス歌曲のなかでも、自分も海辺に立ち、潮風を呼吸しているような鮮烈な印象を残す曲集。そして航海の果てにふたりが辿り着く岸辺、平凡な日常のなかに眠っている、かけがえのない人生の輝きを見出した主人公の最後の台詞は、聴く人にいつまでも響き続けるのではないだろうか。

...j'ai de grands départs inassouvis en moi.

***

ガブリエル・フォーレ 歌曲集「幻想の水平線」より
第一曲「海は果てしなく」 La Mer est infinie 




La Mer est infinie et mes rêves sont fous.
海は果てしなく、ぼくの夢は狂おしい。
La mer chante au soleil en battant les falaises
海は太陽に向かって歌う、断崖に打ちながら。
Et mes rêves légers ne se sentent plus d'aise
ほくの軽やかな夢は、嬉しさに我を忘れ、
De danser sur la mer comme des oiseaux soûls.
海面に踊り狂う、酔いしれた鳥のように。

Le vaste mouvement des vagues les emporte,
波の大いなる躍動はぼくの夢を運び
La brise les agite et les roule en ses plis;
そよ風は揺すり、その小波のなかにくるみ、
Jouant dans le sillage, ils feront une escorte
航跡に戯れ、伴走する船となる、
Aux vaisseaux que mon coeur dans leur fuite a suivis.
ぼくの心が追いかけた、遠ざかってゆく船たちに。

Ivres d'air et de sel et brûlés par l'écume
大気や潮に酔い、海の泡に灼かれるが、
De la mer qui console et qui lave des pleurs
その海はぼくを慰め、涙を洗い流してくれる
Ils connaîtront le large et sa bonne amertume;
ぼくの夢は外海と、その心地よい潮の苦みを知るだろう。
Les goélands perdus les prendront pour des leurs.
迷ったかもめたちは、ぼくの夢を仲間だと思うだろう。

ガブリエル・フォーレ 歌曲集「よき歌」3

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
04 /14 2012
La lune blanche luit dans les bois
「白い月が森に輝く」♪ 

原詩 ポール・ヴェルレーヌ
作曲 ガブリエル・フォーレ (op.61 1892-94年)


La lune blanche
白い月が
luit dans les bois.
森に輝く。
De chaque branche
それぞれの枝から
part une voix
生まれる声が
sous la ramée.
木陰に。
O bien aimée....
おお、愛しい人よ。

L'étang reflète,
池は映す
profond miroir,
深い鏡のように
la silhouette
シルエットを
du saule noir
黒い柳の(シルエットを)
où le vent pleure.
そこで風は泣く、
Rêvons, c'est l'heure.
夢見よう、今はその時、

Un vaste et tendre
果てなく、優しく
apaisement
心和らぐ思いが
semble descendre
降りてくるようだ
du firmament
天空から。
que l'astre irise.
星は空を虹色に染める。
C'est l'heure exquise!
今こそ、妙なる時!


* * *
「よき歌」La Bonne Chanson 第3曲。

第二曲のピアノが奏でた約20年前の若き日の歌曲、「リディア」の旋律が、この歌ではO bien aimée....という呼びかけの前に置かれていて、今は思い出のなかだけにある人への思いを暗示している。繊細な色彩感と響きのある詩と、曲に込めたフォーレ自身の思い。それらを包む自然の変わらぬ美しさ!人と結ばれることで、聴こえなくなっていた自然の音も、気付かずにいた色も、新たに感じられるようになる時。ジェラール・スゼー(Br)とボールドウィン(pf)のコンビによる、旧盤の録音です。

こちらはポストリッジによる弦楽伴奏版:


スザンヌ・ダンコの古典的名演!:

ガブリエル・フォーレ 歌曲集「よき歌」2

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
04 /02 2012
「よき歌」第2曲 

「日が明けていくので Puisque l'aube grandit



Puisque l'aube grandit, puisque voici l'aurore,
日が明けていくので、夜明けの光があるので、
Puisque, après m'avoir fui longtemps, l'espoir veut bien
ぼくから長い間逃げていた希望が
Revoler devers moi qui l'appelle et l'implore,
彼女を呼び懇願している自分に、再び戻ってこようとしているので、
Puisque tout ce bonheur veut bien être le mien,
この幸せが、すっかり自分のものになろうとしているので、

(三節略)

Je veux, guidé par vous, beaux yeux aux flammes douces,
ぼくは君に導かれ、君の優しい炎のような美しい目に導かれ、
Par toi conduit, ô main où tremblera ma main,
君に手を引かれて...おお私の手は震えてしまう
Marcher droit, que ce soit par des sentiers de mousses
歩むのだ、正しい方向へ、苔むした小道であっても、
Ou que rocs et cailloux encombrent le chemin ;
岩や小石に塞がれた道だとしても。

(一節略)

Et comme, pour bercer les lenteurs de la route,
そして、道のりの遅さを紛らわすために、
Je chanterai des airs ingénus, je me dis
ぼくは無邪気な歌をいくつも歌おう、そして自分に言い聞かせる、
Qu'elle m'écoutera sans déplaisir sans doute ;
彼女は聞いてくれるだろう、嫌がりもせず、疑いも持たずに。
Et vraiment je ne veux pas d'autre Paradis.
本当にぼくは、それ以外の天国など望まない。


* * *

フォーレは過去の陰鬱な思いを描いた節を削除し、全7節のうち3節に作曲した。ピアノは過去の恋人のテーマ(初期歌曲「リディア」の引用)を導入する。

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ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。