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デオダ・ド・セブラック 歌曲「山の夜明け」 À l'aube dans la montagne

デオダ・ド・セヴラック(1872-1921)
09 /27 2020


南仏の作曲家、デオダ・ド・セブラック(1872-1921)はピアノ曲が有名ですが、最近入手できるようになった歌曲も、どれも実にユニークな特色があって得難いレパートリーだと思います。この曲は登山の実景描写で、刻々と変わっていく明け方の山と風景の色合いを、色彩語に音符を当てて絵画のように描いた、いわば音の絵筆による風景画です。

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「山の夜明け」 À l'aube dans la montagne
作詞・作曲 デオダ・ド・セブラック
Le long du ciel grenat, d'un grenat d'iris, et roux, d'un roux à peine émeraudé, les cimes s'éveillent une à une, nimbées de gaze brodée d'opales et de poussières d'or.
石榴色石の空、アイリス色のかかった石榴色石の空、赤色、かすかにエメラルド色のかかった赤色の空に沿って、山々の峰は目覚めていく、オパールと金粉の刺繍のある更紗のような靄に包まれて。
Quelques nuages ténus oubliés par la brise se sont attardés aux caresses grisantes des bruyères; Les vallées dans des voiles de lys poudrés de lilas, semblent errer autour des peupliers qui fusent à l'infini vers le regard narquois de la lune.
そよ風に忘れられた薄雲がいくらか、ヒースの陶然とさせる愛撫のうえに名残を惜しんでいる。ライラック色の粉をかぶった百合のヴェールにつつまれた谷は、月の皮肉なまなざしに向かって果てしなく枝を突き出していくポプラの周りを彷徨っているかのよう。
Peu à peu, l'horizon s'affirme en des gestes de flamme qui planent un instant et s'essorent
vers les plaines baignées de sommeil; et des sommets ensanglantés, un ruissellement de rubis se précipite le long des roches
少しずつ地平線が、一瞬たなびく炎のような姿で現れ、眠りこんでいる平野に向かってたなびいていこうとする。そして鮮血色の峰々では、ルビー色の流れが岩壁に沿って走る。
Les grives stridulent dans les taillis vers les échos rieurs. Et les voiles errants se déchirent et se fondent, poussières d'iris, dans l'orfèvrerie des haies.
つぐみが茂みのなかで甲高い声で鳴き、こだまが笑いさざめく。そして彷徨うヴェールは千切れて溶け、アイリス色の埃は、金銀細工のような垣根に溶け入っていく
Lors, une rumeur de joie s'élève des hameaux et des villes et soudain triomphant, l'astre Dieu paraît!
そのとき、村や町から突然楽しげなざわめきが立ち昇り、突然、誇らしげに神の星(太陽)が現れる!

カントルーブ「フランスの歌」Chants de France(1948年)より

ジョゼフ・カントルーブ (1879-1957)
08 /23 2020
故郷オーヴェルニュを愛し、民謡の編曲を終生続けたジョゼフ・カントルーブ (1879-1957)。「オーヴェルニュの歌」(全5巻、1924-55)はよく知られていますが、そのほかの作品、例えばこの「フランスの歌」Chants de France(1948年)はあまり演奏されず、録音はYoutubeでも数えるほど。
 楽譜の冒頭には「わが子ピエールとグイに」と献辞があり、戦災を生き残った子供たちがフランスの伝統を受け継いでほしい、と願い書いたのでしょう。第1曲「Auprès de ma blonde 愛しいブロンド娘のそばで 」。佐々木絵理香さんの生き生きした歌唱と高橋牧子さんピアノが、楽しい民謡の雰囲気を伝えてくれます。

ガブリエル・フォーレ 歌曲「いなくなったひと」

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
04 /21 2020
"L'absent"「いなくなったひと」 op. 5-3 (1871)

Sentiers où l'herbe se balance,
草が揺れている小径よ、
Vallons, côteaux, bois chevelus,
谷よ、丘の斜面よ、鬱蒼とした森よ、
Pourquoi ce deuil et ce silence?
なぜ喪に服し、沈黙しているのか?
"Celui qui venait ne vient plus!"
「来てくれたひとが、もう二度と来ないから!」

Pourquoi personne à ta fenêtre?
君の窓辺に誰もいないのはなぜ?
Et pourquoi ton jardin sans fleurs?
君の庭に花が咲いていないのはなぜ?
Ô maison où donc est ton maître?
おお家よ、お前の主人はどこに?
"Je ne sais pas! il est ailleurs."
「分かりません!主人はどこかへ行ってしまいました」

Chien, veille au logis! "Pourquoi faire?
犬よ、家にとどまれ!「なぜです?
La maison est vide à présent!"
家はいまからっぽです!」
Enfant, qui pleures-tu? "Mon père!"
子供よ、誰のために泣くのか?「お父さんのために!」
Femme, qui pleures-tu? "L'absent!"
女よ、誰のために泣くのか?「いなくなった人のために!」

Où donc est-il allé? "Dans l'ombre!"
彼はどこに行ってしまったの?「闇の中に!」
Flots qui gémissez sur l'écueil,
暗礁の上で呻く波よ、
D'où venez-vous? "Du bagne sombre!"
お前たちはどこから来るのか?「暗い牢獄から!」
Et qu'apportez-vous? "Un cerceuil!"
そして何を運んできたのか?「棺をひとつ!」

ガブリエル・フォーレ 作品43-1/2

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
03 /10 2020
Gabriel Faure Op.43 (1885-6)
原詩 ヴィクトル・ヴィルデール (1835 - 1892)

“Noël”「降誕祭」
La nuit descend du haut des cieux,
夜は天の高みから降りてきて、
Le givre au toit suspend ses franges.
屋根の霧氷は房飾りを吊るす。
Et, dans les airs, le vol des anges
そして、空を天使たちが飛びまわり
Éveille un bruit mystérieux.
不思議な物音を呼びおこす。

L'étoile qui guidait les mages,
東方の博士たちを導いた星は、
S'arrête enfin dans les nuages,
とうとう雲の中に立ち止まり、
Et fait briller un nimbe d'or
金色の後光を輝かせる
Sur la chaumiére où Jésus dort.
イエス様が眠る藁葺屋根の上に。

Alors, ouvrant ses yeux divins,
そのとき、神々しい目を開けて
L'enfant couché, dans l'humble crèche,
貧しい飼葉桶のなかで眠る幼子は
De son berceau de paille fraîche,
新鮮な藁を敷いたゆりかごから
Sourit aux nobles pélérins.
高貴な巡礼者たちに微笑みかける。

Eux, s'inclinant, lui disent: Sire,
博士たちは身をかがめて幼子に語る:「主よ、
Reçois l'encens, l'or et la myrrhe,
この乳香と、黄金と、没薬を受けてください、
Et laisse-nous, ô doux Jésus,
そして私たちにお許しください、おお優しいイエス様、
Baiser le bout de tes pieds nus.
あなたの素足に接吻することを。

Comme eux, ô peuple, incline-toi,
彼らのように、おお人々よ、身を屈めなさい、
Imite leur pieux exemple,
彼らの敬虔な手本に見習いなさい、
Car cette étable, c'est un temple,
なぜならこの家畜小屋は寺院であり、
Et cet enfant sera ton roi!
この幼子はお前たちの主となるだろうから!

作品41-2と共通しているのは、星々の光。
馬に乗った博士たちの足音や、星々の光を描く生彩あるピアノの描写に注目。

Nocturne「ノクターン」
原詩 ヴィリエ・ド・リラダン 
La nuit, sur le grand mystère,
夜は、その大いなる神秘のうえに
Entr'ouvre ses écrins bleus:
青い宝石箱の数々を開いてみせる、
Autant de fleurs sur la terre,
地上のあまたの花と同じほど、
Que d'étoiles dans les cieux!
空には星々!

On voit ses ombres dormantes
眠りに落ちた影たちが、
S'éclairer à tous moments,
絶えず照らし出される
Autant par les fleurs charmantes
魅惑的な花々と同じほど、
Que par les astres charmants.
魅惑的な星々によって。

Moi, ma nuit au sombre voile
私には、暗いヴェールを纏った私の夜には、     
N'a, pour charme et pour clarté,
魅力と明るさは、
Qu'une fleur et qu'une étoile
ただひとつの花と、ひとつの星のみ。         
Mon amour et ta beauté!
それは私の愛と、君の美しさ!

https://imslp.org/wiki/2_Songs%2C_Op.43_(Faur%C3%A9%2C_Gabriel)

マルチヌー 「黒人の詩による2つの歌」より

その他の作曲家たち
07 /23 2019
歌曲の楽譜は語る 34
マルチヌー 「黒人の詩による2つの歌」

先日、フランス歌曲のコンサートでアルベール・ルーセルの「夜のジャズ」を聴いた。1928年の作曲で、生真面目なルーセルには珍しく流行曲のような歌詞の作品だが、当時パリでルーセルに師事したマルチヌーも、師の影響かこうした歌曲を書いている。苦いものが混じり、胸をうつ歌詞と旋律は、マルチヌーの異郷での心境の反映だろうか。


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Dvě písně na slova negerské poesie H.226
「黒人の詩による2つの歌」(1932年)より

Ukolébavka「子守り歌」

Jedné noci
ある夜、
plakal malý černoch v Tennessie,
テネシーで黒人の赤ん坊が泣いていた
protože není bílý!
自分が白くないからと!
Jeho matka jej zlíbala.
母親は子にキスして言った。

Neplač, mé dět'átko,
「泣かないで、わが子よ
neplač mé sladké dítě,
泣かないで、愛しい子よ、
zazpívám ti ukolébavku!
子守り歌を歌ってあげるから!」

Neplač, má malá černá růže,
「泣かないで、私の愛しい黒いバラよ、
zamkni očka svý,
お目々を閉じて
neplač, že jsi černý!
黒いからって泣かないの!」

Tak, jako havran věří,
「カラスは思っているの
že jeho dítě je bílé,
自分の子供が白いと
tak tvoje matka věří,
母さんも思ってる
že jsi růží,
お前はバラのようだと」

když andělé ti dali
「天使がお前にくださったのよ
ty kadeře tvé černé
その黒い巻き毛を、
a zapletli ti do nich
そして中に入れてくださったの
plamen slunečný!
太陽のような炎を!」

A proto myslím,
「だから母さんは思うの
že jsi tak černý
お前がこんなに黒くても
a tvé srdce, miláčku,
愛しいお前の心は
tak sněžné.
雪のように真っ白だと」

Ach neplač, ach neplač,hajej,
「ああ、泣かないで、泣かないで
jsi maminčina malá,
お前は母さんのちっちゃな
černá růže
黒いバラなのだから」

(参考)
日本マルチヌー協会 没後50周年記念コンサート冊子より

ISATT

愛好する歌曲・カンタータの試訳集です。